意味
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは、女性の容姿や立ち居振る舞いが、非常に優雅で美しいことを例えた言葉です。
それぞれの花が最も美しく見える状態を、人の姿勢や動きに例えています。
- 芍薬(しゃくやく):すらりと伸びた茎の先に花を咲かせるため、立っている姿。
- 牡丹(ぼたん):横に枝を広げて重厚な花を咲かせるため、座っている姿。
- 百合(ゆり):風を受けてしなやかに揺れるため、歩く姿。
単に美しいだけでなく、「その場に応じた理想的な美しさ」を兼ね備えているという教訓的なニュアンスも含まれています。
語源・由来

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」の由来には諸説あり、植物の生態に由来する説のほか、漢方の処方に見立てた説もよく知られています。ただし漢方由来説は後世に広まった俗説とみられ、実際には江戸中期頃の流行り歌(都々逸・甚句の類)にその原型があるとする説が有力です。
植物学的な視点では、芍薬は枝分かれせずに真っ直ぐ伸びるため「立姿」、牡丹は枝分かれして低い位置で横に広がるため「座姿」、百合は細い茎の先で花が風に揺れるため「歩姿」に例えられました。
俗説として、江戸時代の漢方医の間で伝わっていたとされる「生薬の使い分け」の覚え歌に見立てて解釈されることもあります。
- 腹痛などで気が立っている(イライラしている)女性には、筋肉の緊張を解く「芍薬」を。
- 血の巡りが悪く座り込んでしまう女性には、血行を良くする「牡丹皮」を。
- 心身が衰弱し、ふらふらと歩く女性には、精神を安定させる「百合(びゃくごう)」を。
しかし、この漢方由来説は後年になって唱えられるようになったものであり、実際の由来としては正確ではないと考えられています。
使い方・例文
現代では、和服を召した方の着こなしや、所作が美しい人への最大級の褒め言葉として用いられます。
単に「美人」と言うよりも、その人の持つ雰囲気や気品を丸ごと肯定するニュアンスが含まれます。
例文
- 舞台に立った彼女は、まさに立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花だ。
- 祖母は背筋が伸び、まさに立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花の人だった。
- 目指すのは立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花のような立ち姿だ。
類義語・関連語
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 沈魚落雁(ちんぎょらくがん):
あまりの美しさに、魚は泳ぐのを忘れて沈み、雁は空から落ちてしまうほどの絶世の美人。 - 閉月羞花(へいげつしゅうか):
月が恥じて雲に隠れ、花も恥じらってしぼんでしまうほどの美しさ。 - 国色天香(こくしょくてんこう):
国で一番の色(美しさ)と、天下一の香りを持つこと。主に牡丹の花や、絶世の美人の形容。
英語表現
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」を英語で表現する場合、そのまま直訳するのではなく、美しさや気品を強調するフレーズを用います。
A woman of graceful carriage
直訳は「気品のある身のこなしの女性」で、「carriage」は身のこなしや歩き方を指し、立ち姿や歩く姿が美しいというニュアンスを的確に伝える表現。
She is as beautiful as a flower in any posture
直訳は「彼女はどんな姿勢でも花のように美しい」で、立っていても座っていても歩いていても、どの瞬間を切り取っても花のように美しいという意訳。
Graceful in every movement
直訳は「あらゆる動作が優雅である」で、特定の植物を使わず動作全般の気品を称える表現。
She is graceful in every movement, just like a blooming flower.
(彼女は、咲き誇る花のように、あらゆる動作が優雅だ。)
江戸の都々逸に見る女の一生
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、江戸時代に流行した都々逸に由来するとされています。
もとの歌は「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、婆になれば萎れ花」と続き、若い女性の美しさもやがて衰えるものとして皮肉交じりに描いた歌でした。
現在広く知られる「立てば芍薬…」の部分だけが独立し、美しい女性の姿を花にたとえる言葉として定着しました。
なお、漢方の生薬の使い方をたとえた言葉だとする説も知られていますが、これは後から付け加えられた俗説とされています。











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