意味
「船を漕ぐ(ふねをこぐ)」とは、腰かけた姿勢のまま体を前や後ろに小さく揺らして、うとうと眠り込んでしまうという意味です。
会議や授業など、起きているべき場面での居眠りによく使います。
ぐっすり寝入って動かない様子には使いません。
「舟を漕ぐ」とも書きます。
- 船(ふね):水上を進む乗り物。
- 漕ぐ(こぐ):櫓や櫂を使って船を進ませること。
語源・由来
「船を漕ぐ」は、居眠りをしているときに体が前後に揺れる様子を、船頭が櫓を操って船を漕ぐ動きにたとえた言葉です。
座ったまま眠ると、頭や上体が前に傾いては戻る動きを繰り返します。
その揺れが、櫓を押したり引いたりして船を進める姿に似て見えるわけです。
使い方・例文
「船を漕ぐ」は、座ったまま居眠りをしている人の様子を言うときに使います。
- 授業中に船を漕いでいたら、先生に注意された。
- 会議中、部長が何度も船を漕いでいた。
- 電車の中で船を漕ぐサラリーマンをよく見かける。
類義語・関連語
「船を漕ぐ」と同様に、居眠りをする様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- うたた寝する(うたたねする):
座ったり寝転んだりしたまま、つい眠り込んでしまうこと。 - こくりこくりする:
頭を前後に揺らしながら、浅い眠りに落ちる様子。
「船を漕ぐ」と「うたた寝する」の違い
どちらも居眠りを表しますが、「船を漕ぐ」は体が前後に揺れる様子そのものに、「うたた寝する」は意図せず浅く眠り込むこと自体に重点があります。
英語表現
nod off
頭がこっくりと前に傾くように、うとうとと眠りに落ちる様子を表す口語表現。
He kept nodding off during the boring lecture.
(彼は退屈な講義の間、ずっと船を漕いでいた。)
船の上で「船を漕ぐ」、浄瑠璃のしゃれ
居眠りの「船を漕ぐ」にかけたしゃれの早い例が、近松門左衛門の浄瑠璃『鑓の権三重帷子』(1717年初演)にあります。
不義の濡れ衣を着せられて逃げる男女の主人公が、伏見から難波(今の大阪)へ向かう場面です。
この場面は「人目を忍ぶ乗合に、空居眠りの船漕げば」(人目を避けて乗り合いの船に乗り、寝たふりをして船を漕いでいると)と語られます。
「空居眠り」は眠ったふりのことで、ここの「船を漕ぐ」は本当の居眠りではありません。
しかも二人は実際に船の上にいて、すぐ横を物売りの茶船が漕ぎ進んでいくので、本物の船を漕ぐことと居眠りの「船を漕ぐ」をかけたしゃれになっています。
しゃれとして通じたということは、居眠りを「船を漕ぐ」と言う言い方が、300年ほど前の大坂ですでに知られていたことになります。










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