意味
「疾言厲色」とは、話し方が荒々しく、顔つきが険しいことという意味です。相手に怒りをぶつけるような、荒々しい言動を形容する言葉です。
- 疾言(しつげん):早口で荒々しく話すこと。
- 厲色(れいしょく):険しい顔つき。
語源・由来
「疾言厲色」は、中国の歴史書『後漢書』の「劉寛伝」に記された、劉寛という人物の人柄に由来する言葉です。
劉寛は、後漢の桓帝の時代に仕えた官僚で、温厚で寛大な人柄で知られていました。
『後漢書』には、劉寛がどれほど急を要する事態に直面しても、「未だ嘗て疾言遽色あらず」、つまり、早口で荒々しく話したり険しい顔つきを見せたりしたことが一度もなかった、と記されています。
本来は「疾言遽色」という形でしたが、後に「厲色」という表記に変わり、「疾言厲色」という言葉として定着しました。
穏やかな人物を語るための否定表現から生まれた言葉が、後の世では逆に、荒々しい言動そのものを指す言葉として使われるようになっています。
使い方・例文
「疾言厲色」は、感情をむき出しにした荒々しい言動を形容する場面で使われます。
- 上司は疾言厲色を慎み、常に穏やかに部下と接した。
- 彼女は疾言厲色とは無縁の、落ち着いた話し方をする人だ。
- どんなに追い詰められても、疾言厲色を見せない胆力が彼にはあった。
類義語・対義語
「疾言厲色」と同様に、怒りが言動に表れる様子を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 語気を荒らげる(ごきをあららげる):怒って言葉遣いが乱暴になること。
- 声を荒らげる(こえをあららげる):怒って大きな声や荒い口調になること。
反対に、穏やかな人柄を表す対義語には、次のような言葉があります。
- 温厚篤実(おんこうとくじつ):穏やかで情に厚く、誠実な人柄。
否定形から生まれた言葉
「疾言厲色」は、もともと「〜がない」という否定の形で、人格者の穏やかさを称えるために使われた言葉でした。
それが時代を経て、否定の部分が省かれ、荒々しい言動そのものを指す言葉として独立していった珍しい成り立ちを持っています。
同じように、本来は打ち消しを伴う形で使われていた言葉が、打ち消しの部分を失って意味が変化した例は、日本語にもいくつか見つかります。
「情けは人の為ならず」が本来の意味とは逆に解釈されるようになった例のように、言葉の意味は使われ方の変化とともに少しずつ姿を変えていきます。









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