怒りがふつふつと込み上げてきて、どうしても心が静まらない。
そんな、抑えきれない怒りの状態を表すのが、「腹の虫が収まらない」(はらのむしがおさまらない)です。
意味
「腹の虫が収まらない」とは、込み上げる怒りをどうしても抑えられない状態という意味です。しゃくにさわる気持ちがいつまでも消えず、心の中でくすぶり続けている様子を表します。
- 腹の虫(はらのむし):腹の中に棲み、感情を動かすとされた想像上の虫。
- 収まる(おさまる):落ち着く、静まる。
語源・由来
「腹の虫が収まらない」は、人の感情や体調を、体の中に棲む虫のしわざと考えた古い身体観に由来します。
中国の道教には、人が生まれながらに体内に「三尸(さんし)」という3匹の虫を宿しているという考え方があり、これが日本にも伝わりました。
平安時代には、病気や不調の原因を「鬼」に求める考え方が一般的でしたが、後の医師たちが、その「鬼」に代わるものとして「虫」を持ち出すようになったといわれています。
江戸時代の末に西洋医学が広まると、体内に虫がいるという考え方そのものは廃れていきましたが、「腹の虫」という言い回しだけが感情を表す慣用句として今も残っています。
使い方・例文
「腹の虫が収まらない」は、理不尽な扱いを受けたときなどに、怒りがいつまでもくすぶる様子を表す際に使われます。
- 一方的に責任を押しつけられ、腹の虫が収まらない。
- 謝罪の言葉一つないことに、いまだに腹の虫が収まらない。
- 彼女は納得のいく説明を受けるまで、腹の虫が収まらない様子だった。
類義語・関連語
「腹の虫が収まらない」と同様に、抑えきれない怒りを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 虫の居所が悪い(むしのいどころがわるい):機嫌が悪く、些細なことで腹を立てやすい状態。
- 腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる):激しい怒りで感情が抑えきれないほど高ぶるさま。
体の中に棲む「感情の虫」たち
感情や体調を「虫」のしわざとする発想は、「腹の虫が収まらない」以外にも日本語のあちこちに残っています。
やる気が出ない状態を指す「虫の居所が悪い」、何とも言えない胸騒ぎを指す「虫の知らせ」、都合よく物事を考えることを指す「虫がいい」なども、同じ身体観から生まれた表現です。
興味深いのは、この「体内の虫」という発想が日本独自のものではなく、古代中国の道教における「三尸」の思想を起点としている点です。
目に見えない感情の動きを、体の中に棲む生き物のしわざとして説明しようとする発想は、洋の東西を問わず古くから見られるものです。









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