怒りは誰もが経験する強い感情です。
古くから伝わることわざや慣用句、故事成語には、この「怒り」という感情を巧みに表現したものが数多く存在します。
本記事では、喜怒哀楽の「怒」にまつわる有名なことわざ、慣用句、故事成語、四字熟語を集め、その意味を分かりやすく紹介します。
怒りの激しさや状態を表す言葉
慣用句
- 怒髪天を衝く(どはつてんをつく):
髪の毛が逆立ち天を衝くほどの激しい怒りの形相。『史記』で藺相如が秦王を鋭く睨みつけた故事に由来する言い回し。 - 業を煮やす(ごうをにやす):
物事が思うように進まず、いらだちが込み上げる様子。「業」はもともと仏教で心の働きを指す言葉だった。 - 腹の虫が収まらない(はらのむしがおさまらない):
込み上げる怒りをどうしても我慢できない状態。腹の中に感情を左右する虫がいるとする古い考え方に基づく表現。 - 腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる):
激しい怒りで感情が抑えきれないほど高ぶるさま。「はらわた」は腹の中の曲がりくねった臓器を指す古い言葉。 - 腹に据えかねる(はらにすえかねる):
込み上げる怒りや不満を心の中に留めておけない状態。「腹を据えかねる」は誤用とされるので注意したい。 - 頭に血が上る(あたまにちがのぼる):
激しく興奮したりカッとなったりして冷静さを失う様子。怒りで体温や血流が変わるような感覚を表した言い回し。 - 青筋を立てる(あおすじをたてる):
怒りや興奮でこめかみや額の静脈が皮膚に透けて青く浮き出て見える様子。極度の憤りを表す描写。 - 語気を荒らげる(ごきをあららげる):
怒って言葉遣いが乱暴になり、強い口調で話し始める様子。声だけでなく話す速さにも表れやすい。 - 癇癪を起こす(かんしゃくをおこす):
激しい怒りを突然爆発させること。「癇」はけいれん、「癪」は腹の痛みを表す語で、神経の高ぶりを意味する。 - 色をなす(いろをなす):
怒りで顔色が変わり、表情がこわばること。感情がそのまま顔に出てしまう瞬間を捉えた言い回し。 - 目角を立てる(めかどをたてる):
怒って目を吊り上げ、相手を鋭く睨みつける様子。目尻がつり上がって見えることに由来する表現。 - 目を三角にする(めをさんかくにする):
怒ったり何かに必死になったりして、目つきが鋭くなる様子。「目角を立てる」とほぼ同じ形相を指す表現。 - ほぞを噛む(ほぞをかむ):
後悔してもどうにもならないことのたとえ。自分のへそを噛もうとしても届かないことに由来する故事成語。(※本来は後悔の意)
四字熟語
- 怒髪衝天(どはつしょうてん):
「怒髪天を衝く」と同義の四字熟語。髪が逆立つほど激しく怒る形相を、より硬い言葉で言い表したもの。 - 疾言厲色(しつげんれいしょく):
早口で言葉を発し、顔つきも険しくなる怒りの様子。『後漢書』で温厚な人物の対極として描かれた表現に由来する。 - 憤慨慷慨(ふんがいこうがい):
世の中の不正や自身の不運などに対し、憤り嘆くさま。「憤慨」も「慷慨」も、強い怒りや嘆きを表す言葉。
怒りを抑えること、我慢、復讐心に関する言葉
ことわざ
- 短気は損気(たんきはそんき):
怒りっぽい性格は結局自分の損になる、との戒め。「損気」は語呂を合わせるために作られた江戸時代の言葉。 - 石地蔵にも腹立ち(いしじぞうにもはらだち):
どんなに温厚な人でも、度が過ぎれば腹を立てるものである、ということ。石地蔵のような穏やかな存在にたとえた言い回し。 - 仏の顔も三度まで(ほとけのかおもさんどまで):
どんなに慈悲深い人でも、無礼を繰り返されればしまいには怒り出す、ということ。狂言『貰聟』にも見える言い回し。 - 怒りは敵と思え(いかりはてきとおもえ):
怒りの感情は冷静な判断を妨げる敵とみなし、警戒すべき、との教え。徳川家康の遺訓と伝えられてきたが、実際は家康の没後に作られた文章とされる。
慣用句
- 堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる):
我慢を溜め込む袋の紐が重さに耐えかね、抑えていた怒りが限界を超えて爆発する様子。江戸時代から使われる言い回し。
故事成語
- 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
目的を達成するために、長い間苦労や試練に耐えること。(復讐の心を忘れないために薪の上に寝て苦い肝を嘗めたという故事から。強い憤りや恨みが原動力となる場合。)
怒りの原因や、怒りがもたらす状況、反撃に関する言葉
ことわざ
- 怒りは無謀に始まり後悔に終わる(いかりはむぼうにはじまりこうかいにおわる):
怒りに任せた行動は無分別な結果を招き、後で必ず後悔する、との戒め。古代ギリシャの哲学者ピタゴラスの言葉ともいわれる。 - 怒れる拳、笑顔に当たらず(いかれるこぶし えがおにあたらず):
怒って振り上げた拳も、相手の笑顔を前にすると打ち下ろせなくなるということ。強気には穏やかさで応じる知恵。
慣用句
- 売り言葉に買い言葉:
相手からの挑発的な言葉に、同じように強い言葉で言い返すこと。市場の売り手と買い手のやり取りに由来する表現。 - 怒りを買う(いかりをかう):
相手を怒らせるような言動をすること。「怒りを遷す」とは反対に、自分の言動が相手の反感を招く場合を指す。 - 怒りを遷す(いかりをうつす):
ある対象への怒りを、関係のない別の人や物に向ける八つ当たり。『論語』にある「不遷怒」の戒めの逆の行い。(遷怒:せんど)
故事成語
- 逆鱗に触れる:
目上の人や権力者などをひどく怒らせること。同輩や部下に対しては使わない、格上限定の言葉。
(龍の逆さの鱗に触れると激怒するという伝説から) - 捲土重来:
一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返してくること。
(土煙を巻き上げて再びやって来る意から。雪辱を期す強い意志を示す場合に、怒りが背景にあることも。)
【特集】 「喜怒哀楽」のことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語
「喜怒哀楽」に関係する有名なことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語の一覧記事です。












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