怒りは誰もが経験する強い感情です。
古くから伝わることわざや慣用句、故事成語には、この「怒り」という感情を巧みに表現したものが数多く存在します。
喜怒哀楽の「怒」にまつわるこうした言葉を、四字熟語・三字熟語も含めて集め、意味を分かりやすく紹介します。
怒りの激しさや状態を表す言葉
慣用句
- 怒髪天を衝く(どはつてんをつく):
髪の毛が逆立ち天を衝くほどの激しい怒りの形相。
『史記』で、藺相如が秦王の前で激しく怒り「怒髪上がりて冠を衝く」と描かれた故事から。日本では「冠」を「天」に変えた形で定着した。 - 業を煮やす(ごうをにやす):
物事が思うように進まず、いらだちが込み上げる様子。 - 腹の虫が収まらない(はらのむしがおさまらない):
込み上げる怒りをどうしても我慢できない状態。
腹の中に感情を左右する虫がいるとする古い考え方に基づく表現。 - 腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる):
激しい怒りで感情が抑えきれないほど高ぶるさま。
「はらわた」は腸、また内臓のこと。 - 腹に据えかねる(はらにすえかねる):
込み上げる怒りや不満を心の中に留めておけない状態。
「肝に据えかねる」は本来の言い方ではない。 - 頭に血が上る(あたまにちがのぼる):
激しく興奮したりカッとなったりして冷静さを失う様子。 - 青筋を立てる(あおすじをたてる):
怒りや興奮でこめかみや額の静脈が皮膚に透けて青く浮き出て見える様子。
極度の憤りを表す描写。 - 語気を荒らげる(ごきをあららげる):
怒って言葉遣いが乱暴になり、強い口調で話し始める様子。 - 癇癪を起こす(かんしゃくをおこす):
激しい怒りを突然爆発させること。
「癇」はけいれん、「癪」は腹の痛みを表す語で、神経の高ぶりを意味する。 - 癇に障る(かんにさわる):
相手の言動や物事が気に入らず、腹立たしく思うこと。
江戸時代の寛政年間に京都・大阪あたりではやった歌から広まった言葉といわれる。 - 色をなす(いろをなす):
怒りで顔色が変わり、表情がこわばること。
感情がそのまま顔に出てしまう瞬間を捉えた言い回し。 - 目角を立てる(めかどをたてる):
怒って目を吊り上げ、相手を鋭く睨みつける様子。 - 目を三角にする(めをさんかくにする):
怒ったり何かに必死になったりして、目つきが鋭くなる様子。
「目角を立てる」とほぼ同じ形相を指す表現。 - 柳眉を逆立てる(りゅうびをさかだてる):
美人がまゆをつり上げて怒るようすをいう語。
柳の葉のように細く美しい眉を意味する「柳眉」を吊り上げる様子から。 - 竹屋の火事(たけやのかじ):
怒って、ぽんぽん言うさまをいう。
竹が燃えると、はじけて音を出すところから。
四字熟語
- 怒髪衝天(どはつしょうてん):
「怒髪天を衝く」と同義の四字熟語。
髪が逆立つほど激しく怒る形相を、より硬い言葉で言い表したもの。 - 疾言厲色(しつげんれいしょく):
早口で言葉を発し、顔つきも険しくなる怒りの様子。
中国の『後漢書』劉寛伝で、温厚な劉寛を「未だ嘗て疾言遽色せず」と評した言葉がもとになっている。 - 悲憤慷慨(ひふんこうがい):
世の中の不正や自分の運命などについて、憤り、嘆き悲しむこと。
怒りを抑えること、我慢、復讐心に関する言葉
ことわざ
- 短気は損気(たんきはそんき):
怒りっぽい性格は結局自分の損になる、との戒め。
「損気」は「短気」に語呂を合わせて作られた語。 - 地蔵の顔も三度(じぞうのかおもさんど):
柔和な地蔵菩薩でも、何度も顔をなでられれば腹を立てるという意から、寛容な人でもたびたびひどい目にあわされれば怒ることのたとえ。
「仏の顔も三度」に同じ。 - 仏の顔も三度まで(ほとけのかおもさんどまで):
どんなに慈悲深い人でも、無礼を繰り返されればしまいには怒り出す、ということ。
いかに温和な仏でも、顔を三度もなでられると腹を立てるという意から。 - 怒りは敵と思え(いかりはてきとおもえ):
怒りの感情は冷静な判断を妨げる敵とみなし、警戒すべき、との教え。
徳川家康の遺訓と伝えられてきたが、実際は家康の没後に作られた文章とされる。
慣用句
- 堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる):
こらえにこらえてきた怒りが、もうこれ以上我慢できなくなって爆発すること。
「緒」は、ひものこと。
故事成語
- 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
目的を達成するために、長い間苦労や試練に耐えること。
もとは、復讐の心を忘れないために薪の上に寝て苦い肝を嘗めたという故事から、復讐を心に誓って辛苦することをいう。
怒りの原因や、怒りがもたらす状況、反撃に関する言葉
ことわざ
- 怒れる拳、笑顔に当たらず(いかれるこぶし えがおにあたらず):
怒って振り上げた拳も、相手の笑顔を前にすると打ち下ろせなくなるということ。
強気には穏やかさで応じる知恵。
慣用句
- 売り言葉に買い言葉:
相手からの挑発的な言葉に、同じように強い言葉で言い返すこと。
市場の売り手と買い手のやり取りに由来する表現。 - 怒りを買う(いかりをかう):
相手を怒らせるような言動をすること。
「怒りを遷す」とは反対に、自分の言動が相手の反感を招く場合を指す。 - 怒りを遷す(いかりをうつす):
ある対象への怒りを、関係のない別の人や物に向ける八つ当たり。
『論語』で孔子が顔回をたたえた「怒りを遷さず」の逆の行い。
(遷怒:せんど)
故事成語
- 逆鱗に触れる:
目上の人や権力者などをひどく怒らせること。
同輩や部下に対しては使わない、格上限定の言葉。
竜ののどの下に逆さに生えた鱗に触れると必ず殺されるという、『韓非子』のたとえ話から。 - 捲土重来:
一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返してくること。
「捲土」は土煙を巻き上げること。
唐の詩人・杜牧の詩の一句から出た言葉。
三字熟語
- 不貞寝(ふてね):
ふてくされて寝てしまうこと。
不満や腹立ちを口に出さず、寝てしまうという態度で示す場面で使う。
【特集】 「喜怒哀楽」のことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語
「喜怒哀楽」に関係する有名なことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語の一覧記事です。









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