故事成語

夢を食う

(ゆめをくう)

悪夢や不吉な夢を、獏(ばく)という想像上の獣が食べて取り除いてくれること。


5文字の言葉」から始まる言葉
夢を食う ことば
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意味

眠りの中の恐怖を、目に見える生き物に食べさせて祓うという、素朴で親しみやすい発想に基づく言葉です。

  • (ゆめ):眠っている間に見る、恐ろしい光景。
  • 食う(くう):獏がその夢を食べて取り除くこと。

語源・由来

獏(葛飾北斎画)
獏(葛飾北斎画)

「夢を食う」は、中国から伝わった想像上の獣・獏(ばく)にまつわる伝説に由来する言い回しです。

獏は、ゾウの鼻、サイの目、ウシの尾、トラの足を持つとされる伝説上の生き物で、中国最古の字書『爾雅(じが)』では、鉄や銅、竹の骨を食べる生き物として記されています。
中国では獏の毛皮を寝具に用いたり、獏の絵を描いたりすることで邪気を払う風習がありましたが、この邪気払いの伝説が日本に伝わる過程で、「悪夢を食べる」という解釈へと変化していったと考えられています。
江戸時代には、獏を描いた札を枕の下に敷いたり、獏の姿をした「獏枕(ばくまくら)」を作ったりする風習も広まりました。

使い方・例文

「夢を食う」は、悪夢や不吉な夢を祓う場面や、獏の伝説そのものを話題にする際に使われます。

  • 怖い夢を見た朝は、「獏よ、夢を食うてくれ」と唱えた。
  • 獏は人の夢を食うとされ、枕元に飾られてきた。
  • 悪夢は獏に夢を食ってもらうしかない、と祖母は笑った。

類義語・関連語

「夢を食う」と同じく、獏や夢祓いにまつわる言葉には以下のようなものがあります。

  • 獏枕(ばくまくら):
    獏の姿を模した、悪夢除けの枕。
  • 悪夢払い(あくむばらい):
    不吉な夢の影響を、祈願などで取り除くこと。
豊臣秀吉が使用したと伝わる獏枕
豊臣秀吉が使用したと伝わる獏枕

英語表現

a dream eater

日本の獏のように、悪夢を食べて取り除いてくれる存在を指す言い方。

In Japanese folklore, the baku is known as a dream eater.
(日本の伝承では、獏は夢を食う存在として知られている。)

ward off nightmares

悪夢が起こらないよう、あらかじめ防ぐことを表す言い方。

People used to keep charms to ward off nightmares.
(人々は昔、夢を食う獏のお守りを持っていた。)

元はパンダだった? 獏の正体をめぐる謎

夢を食べる霊獣として知られる獏ですが、その正体をめぐっては、実在の動物との混同があったのではないかという指摘があります。
中国最古の字書『爾雅(じが)』の注釈には、獏について「熊に似て頭が小さく、脚が短く、白黒のまだら模様で、銅や鉄、竹の骨を食べる」と記されており、この特徴は現在のジャイアントパンダに近いという見方があります。

後の時代になると、体の模様が似ていることから、東南アジアに生息する実在の動物・マレーバクと混同されるようになり、現在ではこちらが「獏」の姿として広く定着しました。
夢を食べるという伝説とは別に、獏という名前そのものの背景にも、複数の動物のイメージが折り重なっています。

マレーバク
マレーバク
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