意味
「精衛海を填む(せいえいうみをうずむ)」とは、力の及ばないことを企てて、結局は無駄骨に終わることのたとえです。
小さな鳥が小石を運んでも広い海が埋まるはずがないことから、報われない無理な企てを指します。
- 精衛(せいえい):中国神話に登場する、小鳥の名前。
- 填む(うずむ):物を積み重ねて埋め尽くすこと。
語源・由来
由来は、中国最古の地理・神話書とされる『山海経』に記された伝説です。
古代中国の炎帝の娘・女娃は、東の海で遊んでいるときに溺れて命を落としてしまいます。
彼女の魂は精衛という小鳥に姿を変え、西の山から小石や木の枝をくちばしに運んでは、自分を飲み込んだ東の海に落とし続けたといいます。
一羽の小鳥の力で広大な海を埋め尽くせるはずもなく、それでも精衛は来る日も来る日もこの行為を繰り返したと伝えられています。
日本では、この故事から、力の及ばないことを企てて徒労に終わることのたとえとして使われます。
一方、中国語の「精衛填海」は、恨みを晴らそうと心に誓うことや、困難を恐れない固い意志のたとえとして使われます。
使い方・例文
身の程を超えた企てや、どれだけ力を注いでも成果の見込めない取り組みを評する際に使われます。
書き言葉として使われることが多い表現です。
『太平記』にも、鎌倉幕府を滅ぼそうとする企てを「蟷蜋車を遮ぎり、精衛海を填んとするに異ならず」と評する一節があります。
- 一人の力で巨大企業の方針を変えようとするのは、精衛海を填むようなものだ。
- 予算も人手もないまま市内の放置自転車を一掃しようなど、精衛海を填むに等しい。
- 周囲からは精衛海を填む企てだと笑われたが、彼は署名集めをやめなかった。
類義語・関連語
- 蟷螂の斧(とうろうのおの):
弱い者が自分の力量もわきまえず、強い相手に立ち向かうことのたとえ。 - 愚公山を移す(ぐこうやまをうつす):
大きな山も、根気強く努力を続ければいつか動かせるという故事成語。
努力が実を結ぶ側の言葉で、日本語の「精衛海を填む」とは向きが逆だが、中国語の「精衛填海」の意味には近い。
英語表現
a Sisyphean task
「シーシュポスの岩のような、終わりのない徒労」という意味の表現で、ギリシャ神話で、山頂まで運んでも転がり落ちる岩を永遠に押し上げ続けたシーシュポスの物語に由来する表現です。
徒労に終わるという点で、「精衛海を填む」と発想が近い言葉です。
Cleaning up the beach felt like a Sisyphean task.
(海岸の清掃活動は、精衛海を填むような徒労に思えた。)
『山海経』に記された、炎帝の娘の変身譚
精衛の物語は、中国古代の地理書『山海経』の「北山経」に記されています。
炎帝の娘・女娃が東海で泳いでいるときに溺れて亡くなり、精衛という鳥に姿を変えたという話です。
精衛は、頭に模様があり、白いくちばしと赤い足を持つカラスに似た姿をしているとされ、西の山から小石や木の枝をくわえては東海に運び、海を埋めようとし続けたと伝えられています。
自らの命を奪った海に対して終わることのない抵抗を続けるこの姿が、「精衛海を填む」という言葉の由来になっています。











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