竜になれるのは、滝を登り切った鯉だけ。
とても自分には届きそうもない相手に、それでも憧れずにいられない。そんな叶わぬ望みを表すのが、「及ばぬ鯉の滝登り」(およばぬこいのたきのぼり)です。
意味
及ばぬ鯉の滝登りとは、身分や力量が釣り合わず、とうてい叶いそうにない望みを抱くことという意味です。
特に、相手が自分には不釣り合いなほど高嶺の花で、実現の見込みが薄い恋心を指して使われることが多い言葉です。
- 及ばぬ(およばぬ):届かない、かなわないこと。
- 鯉(こい):「恋」と掛けた言葉遊び。
- 滝登り(たきのぼり):鯉が激しい滝を登ろうとすること。
語源・由来
「鯉の滝登り」は、中国の故事に由来する言葉です。
黄河の急流にある「竜門」という難所を多くの魚が登ろうとしたものの、登り切ることができたわずかな魚だけが竜になったという伝説から、鯉が滝を登る姿は、立身出世や大きな飛躍のたとえとして使われるようになりました。
「及ばぬ鯉の滝登り」は、この「鯉の滝登り」に、「及ばぬ」(届かない、かなわない)という言葉を添えた表現です。
さらに「鯉」に「恋」を掛けた言葉遊びによって、いくら望んでも決して届かない恋心や、身分違いの叶わぬ恋をたとえる言葉として使われるようになりました。
使い方・例文
自分には到底手が届かない相手や目標に憧れる、叶わぬ望みを表す場面で使われます。
- 人気アイドルに憧れるなんて、まさに及ばぬ鯉の滝登りだ。
- 社長令嬢との結婚を望むのは及ばぬ鯉の滝登りというものだ。
- 実力差を考えれば、今回の優勝は及ばぬ鯉の滝登りかもしれない。
類義語・関連語
英語表現
「及ばぬ鯉の滝登り」を英語で表現する場合、実現不可能な望みを表す言い回しが使えます。
reach for the moon
- 意味:「月に手を伸ばす」、転じて「とうてい叶わない望みを抱く」
- 解説:どんなに手を伸ばしても届かない月を望むという情景から、実現不可能な望みを表す言い回しで、「及ばぬ鯉の滝登り」に近い表現です。
- 例文:
Falling for a movie star is like reaching for the moon.
(映画スターに恋するなんて、及ばぬ鯉の滝登りのようなものだ。)
「登竜門」も「こいのぼり」も、同じ伝説から生まれた
黄河の難所を登り切った魚だけが竜になるという「登竜門」の伝説は、「及ばぬ鯉の滝登り」だけでなく、さまざまな言葉や風習を生み出しました。
試験や選考の難しい関門を「登竜門」と呼ぶのも、この伝説に由来します。
また、5月の端午の節句に掲げる「こいのぼり」も、鯉が滝を登って竜になるという同じ伝説にちなみ、子どもの立身出世を願って生まれた風習だとされています。
片や叶わぬ恋を嘆く言葉、片や子の将来を祝う飾り物と、同じ鯉の伝説が対照的な形で日本の文化に根付いていることは興味深い事実です。









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