まだ雨は一滴も降っていないのに、高殿にはすでに強い風が吹きつけている。
大事が起こる前の不穏な気配を表すのが、「山雨来たらんと欲して風楼に満つ」(さんうきたらんとほっしてかぜろうにみつ)です。
意味
山雨来たらんと欲して風楼に満つとは、大きな事件や変乱が起こる前には、何かしら不穏な気配や兆候が現れることという意味です。
山から雨がやってこようとする時、高楼にはまず激しい風が吹き満ちるという自然の情景を借りた、緊迫感を伴う表現です。
- 山雨(さんう):山から吹き寄せる雨。
- 風楼(かぜろう):風が吹きつける高殿。
語源・由来
この言葉は、晩唐の詩人許渾が詠んだ「咸陽城東楼詩」の一節に由来します。
許渾は都の跡地となった咸陽の高殿に立ち、王朝の衰退という大きな時代の変わり目を前にして、山から雨が来る前触れとして吹きすさぶ風を詠み込みました。
この一句が、天候の描写にとどまらず、政変や社会の激動を予感させる不穏な気配のたとえとして、後世に広く引用されるようになりました。
使い方・例文
「山雨来たらんと欲して風楼に満つ」は、大きな変化や事件の前触れとなる不穏な空気を表す際に使われます。
- 市場の異変は、山雨来たらんと欲して風楼に満つを思わせる。
- 社内の噂話は、まさに山雨来たらんと欲して風楼に満つの様相だ。
- 選挙前の緊張した空気は山雨来たらんと欲して風楼に満つだった。
類義語・関連語
「山雨来たらんと欲して風楼に満つ」と同様に、大事の前触れを表す言葉には以下のようなものがあります。
中国唐代の政変を映した一句
「山雨来たらんと欲して風楼に満つ」が詠まれた晩唐は、宦官の専横や地方勢力の台頭によって王朝の統制が揺らいでいた時代でした。
詩人の許渾は、かつて秦の都として栄えた咸陽の廃墟に立ち、目の前の自然現象に王朝の行く末を重ねたとされています。
一句の自然描写が、時代の空気そのものを象徴する言葉として千年以上語り継がれている点は、漢詩が持つ比喩の力を示す例といえます。









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