意味
「檄を飛ばす(げきをとばす)」は、多くの人に向けて呼びかけ、共感や奮起を促すことを表す言い方です。
「檄」は人を呼び集めるために方々へ回した文書、「飛ばす」はその文書を各地へ送ることを指し、これらを合わせて広く呼びかけて人を動かすという成り立ちです。
- 檄(げき):人を呼び集めるための文書。
- 飛ばす(とばす):知らせを遠くへ送ること。
語源・由来
「檄」は、古代中国で召集や説諭に用いた文書で、木の札が使われました。
そこから転じて、自分の考えや主張を述べて大衆に行動を促す文書も「檄」と呼ぶようになりました。
「檄を飛ばす」には、賛同を求めて呼びかける形と、方々へ声をかけて人手を集める形の両方があります。
使い方・例文
「檄を飛ばす」は、多くの人に呼びかけて同意や行動を求める場面で使われます。
- 会長は全支部に檄を飛ばし、署名を集めた。
- 各紙に檄を飛ばして、反対の立場をはっきり示した。
- 決起を促す檄が飛んだのは、その翌日だった。
文化庁調査、「励ます」の意で使う人が67.4%
文化庁「国語に関する世論調査」(平成29年度)では、「檄を飛ばす」を「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」の意味で使う人が22.1パーセント、「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」の意味で使う人が67.4パーセントでした。
本来の意味を選んだ人は、平成15年度が14.6パーセント、平成19年度が19.3パーセント、平成29年度が22.1パーセントと、調査のたびに増えています。
この受け取り方が定着し、いまでは「がんばれと励ます」「激励する文書を送る」という意味でも使われます。
元気づける意味をはっきり伝えたいときは、下に挙げる「活を入れる」「発破をかける」という言い方があります。
同じように意味の受け取られ方が分かれる言葉は、誤用されがちな ことわざ、四字熟語、慣用句にもまとめています。
類義語・関連語
「檄を飛ばす」のように、言葉を投げかけて人を動かすことを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 飛檄(ひげき):
檄文を各地へ飛ばすこと。「檄を飛ばす」と同じ意味。 - 活を入れる(かつをいれる):
刺激を与えて元気づけること。 - 発破をかける(はっぱをかける):
強い言葉で激励したり、気合いを入れたりすること。
英語表現
rally
人々を呼び集めて一つの目的に向かわせることを表す語。
He rallied the members to his cause.
(彼は自らの主張に賛同を求めて檄を飛ばした。)
make an appeal to the public
広く世の中に訴えかけることを表すフレーズ。
The group made an appeal to the public for support.
(その団体は支持を求めて檄を飛ばした。)
「檄」に鳥の羽、漱石は貸家探しに「檄を飛ばす」
古代中国では、急いで届けたい檄に鳥の羽を挿しました。
これを「羽檄」といいます。
『史記』と『漢書』によると、漢の高祖(劉邦)は、家臣が背いたとき、側近に「吾以羽檄徴天下兵、未有至者」と語りました。
(羽檄で天下の兵を呼び集めたが、まだ一人も来ていない)
唐の時代に『漢書』に付けられた注は、檄は長さ一尺二寸の木の札に書いた召集の文書で、急ぎのときは鳥の羽を挿して速さを示した、と説明しています。
羽は、飛ぶように速く届けよというしるしでした。
日本では夏目漱石が、1907年(明治40年)9月に友人へ送った手紙に「四方に檄を飛ばして貸家を捜がしてゐる」と書いています。
このころ漱石は家主に家賃を上げられ、引っ越し先を方々の知人に頼んで探していました。
漱石の「檄を飛ばす」も、人を励ますのではなく、あちこちへ知らせて助けを求める使い方です。









コメント