意味
「盗人猛々しい(ぬすびとたけだけしい)」とは、悪事を働いた側が、とがめられても顔色を変えず、かえって言い返してくるさまをいいます。
盗みに限らず、悪事をとがめられた人の態度に向けて使われる言い方です。
相手をののしって言う言葉です。
- 盗人(ぬすびと):他人の物を盗む者。
- 猛々しい(たけだけしい):ずうずうしい。ずぶとい。
語源・由来
「盗人猛々しい」は、盗みを働いた当人が、見とがめられてもふてぶてしく構えている姿から生まれた言い方です。
「猛々しい」はもともと勇ましく強そうな様子をいう言葉で、そこから図太い、ずうずうしいという意味にも使われるようになりました。
使い方・例文
「盗人猛々しい」は、非があるはずの相手が居直ったときに、その態度をとがめて使われます。
- 万引きを注意されて「証拠はあるのか」と店員に詰め寄るとは、盗人猛々しい。
- 借りた金も返さずに催促の仕方を責めるなど、盗人猛々しい話だ。
- 人の企画を盗んでおきながら、指摘されると「似ているだけだ」と開き直るとは、盗人猛々しい。
読み方は「ぬすびと」と「ぬすっと」
「盗人」には「ぬすびと」「ぬすと」「ぬすっと」という読みがあります。
この言い回しも「ぬすっとたけだけしい」とも読み、「盗っ人猛々しい」とも書きます。
類義語・関連語
「盗人猛々しい」と同じように、悪事を悪びれない態度をとらえた言葉には以下のようなものがあります。
- 厚顔無恥(こうがんむち):
極めて図々しく、自分の言動を少しも恥じないこと。 - 鉄面皮(てつめんぴ):
恥を恥とも思わず、ずうずうしい態度を取ること。 - 白を切る(しらをきる):
本当は知っているのに、知らないふりをしてとぼけること。 - 盗人にも三分の理(ぬすびとにもさんぶのり):
どんな悪事にも、それなりの言い分はつけられるということ。
「盗人猛々しい」と「厚顔無恥」の違い
二語とも恥じ入らない図々しさを指す点は同じで、入れ替えたくなる組み合わせです。
違いは、使える場面が悪事の指摘に限られるかどうかにあります。
| 語句 | 使える場面 | 言葉の向き |
|---|---|---|
| 盗人猛々しい | 非をとがめた直後 | その場の態度への非難 |
| 厚顔無恥 (こうがんむち) | 場面を選ばない | 人柄そのものへの非難 |
英語表現
have some nerve
「よくもそんな口がきけたものだ」と、あきれをこめて相手をとがめる言い方。
You have some nerve complaining after breaking it yourself.
(自分で壊しておいて文句を言うとは、盗人猛々しい。)
brazen it out
非を認めず、そしらぬ顔で押し通すという居直りの表現。
Caught red-handed, he tried to brazen it out.
(現場を押さえられても、彼は居直って押し通そうとしました。)
「泥棒」に替わらなかった「盗人猛々しい」
ことわざに出てくる「盗人」は、明治以降に「泥棒」へ置き換わったものが多くあります。
「盗人に追い銭」が「泥棒に追い銭」ともいわれるのがその例です。
ところが「盗人猛々しい」は江戸時代の初めからよく使われてきたのに、「泥棒猛々しい」の形はほとんど見られません。
昭和の作家・吉川英治の『三国志』でも、朝廷の軍を名乗って自分を「乱賊」(= 国を乱す賊)と責める後漢の丞相・曹操に、曹操に父を殺された武将の馬超が「盗人猛々しいとは、その方のこと」と言い返しています。
昭和の小説でも、「泥棒」ではなく「盗人」の形で書かれているわけです。









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