意味
「そうは問屋が卸さない」は、相手の虫のいい見通しに対して、そうはさせないと言い返すときの決まり文句です。
そうはいかない、いかせるものか、という気持ちをそのまま口にせず、軽口混じりにひねりを利かせて言い返す形です。
- 問屋(とんや):生産者から仕入れ、小売店に売る店。
- 卸す(おろす):問屋が小売店へ品物を売り渡すこと。
語源・由来
「そうは問屋が卸さない」は、品物の値段をめぐる商いのやり取りをもとにした言い方です。
買い手が無理な値を持ちかけても、仕入れ元の問屋がその値では品物を渡さない、という筋道です。
夏目漱石の「坑夫」(1908年)には「さぞ儲けたいだろうが、そうは問屋で卸さない」と、「が」ではなく「で」を使った形が出てきます。
使い方・例文
「そうは問屋が卸さない」は、相手の甘い見込みをその場ではねつけるときに使われます。
- 一晩で追いつくつもりらしいが、そうは問屋が卸さない。
- 値切れば通ると思っていたが、そうは問屋が卸さないようだ。
- 新人にまかせて楽をするつもりが、そうは問屋が卸さなかった。
「そうは問屋が許さない」は本来の言い方ではない
「卸さない」を「許さない」と入れ替えて覚えている人が少なくありません。
文化庁の「国語に関する世論調査」では、平成18年度に「そうは問屋が卸さない」を使う人が67.7パーセント、「そうは問屋が許さない」を使う人が23.5パーセントでした。
平成27年度の調査でも70.4パーセントと23.6パーセントで、割合はほとんど動いていません。
本来の言い方は「卸さない」です。
類義語・関連語
「そうは問屋が卸さない」と同じように、物事が思いどおりに運ばないことを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 一筋縄ではいかない(ひとすじなわではいかない):
普通のやり方では手に負えないこと。 - 捕らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう):
手に入るかどうかわからないものを当てにして計画を立てること。 - 糠喜び(ぬかよろこび):
いったん喜んだあとで当てが外れ、無駄に終わること。
「そうは問屋が卸さない」と「一筋縄ではいかない」の違い
どちらも物事がすんなり進まないことを表すため、入れ替えて使われがちです。
「そうは問屋が卸さない」は相手の見込みをその場ではねつける言い返し、「一筋縄ではいかない」は相手や物事の手ごわさを述べる言い方です。
| 語句 | 向けられる先 | 言葉の焦点 |
|---|---|---|
| そうは問屋が卸さない (そうはとんやがおろさない) | 甘い見込みを口にした相手 | 思いどおりにはさせない意思 |
| 一筋縄ではいかない (ひとすじなわではいかない) | 特に定まらない | 対象の手ごわさ |
英語表現
dream on
相手が望んでいることは起こりそうにないと、軽く突き放すときの言い方。
You think you can finish it in one night? Dream on.
(一晩で終わらせるつもりですか。そうはいきません。)
fat chance
そうなる見込みはまずないと打ち消すときの表現。
Fat chance of getting a discount here.
(ここで値引きしてもらえる見込みなどありません。)
「そうは烏賊の金玉」という仲間
「そうは問屋が卸さない」には、「そうは虎の皮のふんどし」「そうは烏賊の金玉」という同じ類の言い方があります。
「そうは烏賊の金玉」は「そうは行かぬ」の「いか」に「烏賊」を掛けて、そうはいかないことをしゃれて言った言葉です。
いっぽう「そうは問屋が卸さない」は音の掛け合わせではなく、商いの筋道をそのまま持ち出した形になっています。
相手の注文に乗らないというところから問屋を引き合いに出した形です。









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