意味
「前虎後狼」は、「前門の虎、後門の狼」ということわざを四字にまとめた形です。
表の門から入ろうとする虎を防いだところで、裏の門からはすでに狼が入り込んでいる、という情景から、一つの災いを逃れてもまた別の災いに見舞われることを表します。
語源・由来
「前虎後狼」のもとになったのは、中国で古くから使われてきた「前門に虎を拒ぎ、後門に狼を進む」ということわざです。
この言い回しは、元代(13〜14世紀)の学者、趙弼(趙雪航)が書いた「評史」という書物に出てきます。
そこでは、後漢王朝の時代に、権力をふるっていた皇后の一族を宦官たちが追い払った事件をとりあげ、「ことわざでいう『前門に虎を拒ぎ、後門に狼を進める』というものだ」と述べています。
表門で虎の侵入を防ぎながら、裏門から狼を引き入れてしまった、という見立てです。
使い方・例文
「前虎後狼」は、一つの困りごとを片づけたそばから次の困りごとが現れる場面で使われます。
- 資金の目処がついた途端に人手が足りない。前虎後狼である。
- 台風の被害の次は病気とは、まさに前虎後狼の一年だった。
- 訴訟が片づいても税務調査が来る。前虎後狼の日々が続く。
類義語・関連語
「前虎後狼」と同じように、災いが続けて降りかかることを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 前門の虎、後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ):
一つの危難から身を守っても、さらに別の危難が現れること。 - 一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん):
一つの災難が去ったと思うと、すぐ次の災難が起こること。 - 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
困っているところへ、さらに困ったことが重なること。 - 弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ):
弱っているときに限って、悪いことが重なること。
「前虎後狼」と「一難去ってまた一難」の違い
どちらも災いが続く様子を表しますが、災いの並び方が違います。
「前虎後狼」は前と後ろの両方から同時に迫られる形で、「一難去ってまた一難」は一つが去ったあとに次が来る形です。
| 語句 | 災いの並び方 | たとえているもの |
|---|---|---|
| 前虎後狼 (ぜんここうろう) | 前後から挟まれる | 虎と狼 |
| 一難去ってまた一難 (いちなんさってまたいちなん) | 去ってから次が来る | たとえを用いない |
英語表現
out of the frying pan into the fire
一つの苦境を抜け出したとたん、もっと悪い状況に落ち込むことを表す言い方。
Changing teams was like jumping out of the frying pan into the fire.
(チームを移ったのは、一つの災いから別の災いへ飛び込むようなものでした。)
本来は四字ではなく七字だった
この言葉のもとになった句は、明の趙弼による『評史』に見える「前門拒虎、後門進狼」だとされています。
中国では、李卓吾の『史綱評要』周紀にある「前門拒虎、後門進狼、未知是禍是福」を初出とする説もあります。
どちらも「前門で虎を防いでも、後門から狼が入ってくる」という七字の句で、一つの災いを逃れた先に別の災いが待っていることのたとえです。
日本語の「前虎後狼」という四字の形は、この七字の句を四字熟語の体裁に縮めたものです。









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