意味
「天寿を全うする」は、天から授かった寿命を最後まで使い切って死ぬことを意味します。
「天寿」に「全うする」を続けた言い方で、病気や外傷によらず、長生きした末に自然な死を迎える様子を表します。
この「天寿」とは、その人にあらかじめ定められた命の長さのことで、「天年」「定命」ともいいます。
- 天寿(てんじゅ):天から授かった寿命。
- 全う(まっとう):完全に果たすこと。
語源・由来
「天寿を全うする」の「天寿」は中国から入った言葉で、『史記』の楚世家に、重い病に伏した楚の昭王がこの語を口にする場面が登場します。
昭王は公子や大夫たちを枕元に呼び、自分は才に乏しく二度も楚の軍に恥をかかせたが、それでもこうして天寿を終えて逝けるのは自分の幸いだ、と語りました。
原文では「今乃ち天寿を以て終わるを得るは、孤の幸いなり」と記されています。
使い方・例文
「天寿を全うする」は、亡くなった人の生涯を振り返って伝える場面で使われます。
- 祖母は九十八歳で天寿を全うし、家族に見守られて逝った。
- 「天寿を全うされました」と、医師が静かに告げた。
- 大きな病を得ることもなく、祖父は天寿を全うした。
類義語・関連語
「天寿を全うする」と同じように、寿命を使い切って安らかに死ぬことを言い表す言葉には以下のようなものがあります。
- 大往生(だいおうじょう):
少しの苦しみもなく、安らかに死ぬこと。 - 畳の上で死ぬ(たたみのうえでしぬ):
事故死や変死ではない、あたりまえの死に方をすること。
「天寿を全うする」と「大往生」の違い
どちらも穏やかな最期を言い表すため、置き換えて使われることがあります。
「天寿を全うする」は寿命を使い切ったかどうかを見ており、「大往生」は死に際のありさまを見ています。
| 語句 | 見ているところ | 使われ方 |
|---|---|---|
| 天寿を全うする (てんじゅをまっとうする) | 寿命を使い切ったか | 長生きしたうえでの自然な死 |
| 大往生 (だいおうじょう) | 死に際のありさま | 苦しみのない安らかな死 |
対義語
「天寿を全うする」と正面から対立する、寿命の途中で断たれる死を表す言葉があります。
- 横死(おうし):
殺害されたり災難にあったりして、天命を全うしないで死ぬこと。
英語表現
die a natural death
病気や事故ではなく寿命によって死ぬことを表す言い方。
My grandfather died a natural death at the age of ninety-eight.
(祖父は九十八歳で天寿を全うしました。)
live to a ripe old age
十分に年を重ねるまで生きたことを伝える言い方。
She lived to a ripe old age, surrounded by her family.
(彼女は家族に囲まれて天寿を全うしました。)
「真っ当」と「全う」のつながり
「全うする」の「まっとう」は、完全であるという意味の形容詞「まったい」の連用形「まったく」が音変化した形です。
この「まっとう」は形容動詞としても使われ、そちらには「まともなさま」「まじめなさま」という意味で「真っ当」の字が当てられます。
つまり「真っ当な人生」の「まっとう」も「天寿を全うする」の「まっとう」も、もとをたどれば同じ「まったく」から枝分かれした形です。










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