意味
「多士済々(たしせいせい)」とは、能力の高い人物が一つの場に数多くそろっているさまを指す四字熟語です。
会社やチームなど、優れた人材が集まった集団をほめる場面で使われ、個人の能力そのものより集団の層の厚さに注目する言葉です。
読み方は「たしせいせい」が本来ですが、「たしさいさい」という慣用読みも広く使われています。
- 多士(たし):多くのすぐれた人材。
- 済々(せいせい):数多く盛んなさま。
語源・由来
「多士済々」は、中国最古の詩集『詩経』の大雅・文王に登場します。
「済済たる多士、文王以て寧んず」(大勢のすぐれた家臣たちがいたおかげで、文王は国を安らかに治めることができた)という一節で、周の国を築いた文王を支えた家臣団の多さと質の高さをたたえた言葉です。
この一節の「済済たる多士」が、のちに「多士済済」という四字熟語として使われるようになりました。
使い方・例文
「多士済々」は、会社の人材やスポーツチームの選手層など、優れた人がそろっている集団をほめる場面で使われます。
- 新入社員には各分野のスペシャリストがそろい、まさに多士済々の陣容だ。
- このチームは控え選手まで多士済々で、誰が出ても安定した戦力になる。
類義語・関連語
「多士済々」と同じように、優れた人が大勢そろっている様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 綺羅星(きらぼし):
立派な人や才能あふれる人が数多く並んでいる様子。 - 錚々たる顔ぶれ(そうそうたるかおぶれ):
特に名の知られた、力のある人たちがそろっていること。
「多士済々」と類義語の違い
いずれも大勢の優れた人がそろう様子を表しますが、注目する点が違います。
「多士済々」は集団全体の層の厚さや実力を評価する言葉で、「綺羅星」は顔ぶれの華やかさを、「錚々たる顔ぶれ」は一人ひとりの実績や知名度の高さを強調します。
| 語句 | 注目する点 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 多士済々 (たしせいせい) | 実力・層の厚さ | 組織づくり、人材紹介 |
| 綺羅星 (きらぼし) | 華やかさ・知名度 | 著名人の紹介 |
| 錚々たる顔ぶれ (そうそうたるかおぶれ) | 個々の実績・知名度 | 審査員や役員の紹介 |
対義語
「多士済々」とは反対に、人は多くても実力や統率が伴わない集団を指す言葉に、次のものがあります。
- 烏合の衆(うごうのしゅう):
規律や統率がなく、寄せ集まっただけの集団であること。
英語表現
a wealth of talent
優れた人材が豊富にそろっている状態を表す表現。
The department has a wealth of talent, from engineers to designers.
(その部署には、エンジニアからデザイナーまで多士済々の人材がそろっている。)
stacked with talent
スポーツやチーム編成で、実力のある人がそろっている様子を表すくだけた言い方。
This year’s roster is stacked with talent at every position.
(今年のメンバーは、どのポジションも多士済々だ。)
「子子孫孫」を略した周代の青銅器
「済々」の「々」は漢字ではなく、同じ文字の繰り返しを示すためだけの記号で、正式には「同の字点」と呼ばれます。
中国では殷の時代から、同じ文字が続くときに二文字目を省略し、代わりに小さな「=」に似た印を添える書き方があり、これを重文号と呼びます。
この習わしを裏づける具体例として知られるのが、紀元前900年頃の西周時代の青銅器「史頌鼎」で、その銘文の末尾には「子子孫孫寶用(子々孫々まで宝として用いよ)」の文字が「子=孫=寶用」のように略して刻まれています。
はるか後の日本語で使われる「々」も、この繰り返しを省略する古い習わしの流れをくむ記号であり、「済済」と漢字を重ねて書くか「済々」と省略記号を使って書くかという表記のゆれも、その名残といえます。












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