故事成語 ことわざ

巧詐は拙誠に如かず

(こうさはせっせいにしかず)

巧みに人をだますよりも、拙くても誠実であるほうがよいという教え。


12文字の言葉 / 「こ・ご」から始まる言葉
巧詐は拙誠に如かず ことば
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意味

「巧詐は拙誠に如かず(こうさはせっせいにしかず)」とは、どんなに巧みに人をあざむいても、不器用であっても誠実であることには及ばないという教えです。
「巧詐」(たくみないつわり)と「拙誠」(つたないながらの誠実さ)という対照的な二語を並べ、小手先の技巧より心からの誠実さに価値を置く考え方を示しています。
ビジネスや人間関係において、目先の要領のよさよりも地道な信頼の積み重ねを重んじる場面で引用されます。

  • 巧詐(こうさ):巧みに人をあざむくこと。
  • 拙誠(せっせい):不器用でも誠実であること。

語源・由来

「巧詐は拙誠に如かず」は、中国戦国時代の思想家・韓非かんぴの著書『韓非子』の説林上篇に登場します。
そこには対照的な二人の家臣の逸話が語られています。
魏の将軍・楽羊がくようが中山国を攻めたとき、中山の君は中山にいた楽羊の子を煮て羹あつもの(熱い吸い物)にし、楽羊のもとへ送ってきました。
楽羊は陣中でそれを一杯飲み干し、中山を攻め落としました。
一方、孟孫もうそんに仕えた秦西巴しんせいはは、主君の命令に反し、捕らえた子鹿を哀れに思って母鹿のもとへ逃がしてしまいます。
結果として、要領よく立ち回った楽羊は主君の文侯に功を賞されながらも心の内を疑われ、不器用ながらも情に厚かった秦西巴は、いったん追放されたのちに主君の子の教育係に抜擢されました。
この対比から、巧みな計算よりも不器用な誠実さのほうが最後には信頼されるという教えが導かれています。

使い方・例文

「巧詐は拙誠に如かず」は、巧妙なごまかしより地道な誠実さを評価する場面で使われます。

  • 巧詐は拙誠に如かずというように、口先だけの謝罪より不器用な行動のほうが信頼を得る。
  • 交渉では駆け引きより誠実さを選んだ。巧詐は拙誠に如かずを身をもって実感した。
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類義語・関連語

「巧詐は拙誠に如かず」と同様に、誠実さの価値を説く言葉には、次のようなものがあります。

  • 誠心誠意(せいしんせいい):
    偽りなく真心を尽くすこと。
  • 大巧は拙なるが若し(たいこうはせつなるがごとし):
    本当に優れた技術は、一見つたなく見えるものだということ。

「巧詐は拙誠に如かず」と「大巧は拙なるが若し」の違い

どちらも「拙」という文字を含み、見た目と本質のギャップを説く点で似ていますが、テーマが異なります。
「巧詐は拙誠に如かず」は誠実さと偽りという道徳的な価値を比べる言葉であるのに対し、「大巧は拙なるが若し」は技術の巧みさがどう見えるかを説く言葉です。

語句テーマ出典
巧詐は拙誠に如かず
(こうさはせっせいにしかず)
誠実さ対偽り(道徳)韓非子
大巧は拙なるが若し
(たいこうはせつなるがごとし)
技術の巧みさの見え方老子

英語表現

Honesty is the best policy

誠実さこそ、結局は自分のためにも一番良い結果をもたらすという教訓。

My grandfather always told me that honesty is the best policy, even in business.
(祖父はいつも、商売でも正直が一番の得策だと言っていた。)

An honest tale speeds best, being plainly told

シェイクスピアの戯曲に由来する、飾らず素直に語られた話こそ一番伝わる、という言い回し。

She kept her speech simple, believing that an honest tale speeds best, being plainly told.
(彼女は、飾らない話ほどよく伝わると信じて、スピーチを簡潔にまとめた。)

人を信じない思想家が説いた、不器用な誠実さ

「巧詐は拙誠に如かず」を書き記した韓非かんぴは、法家思想の大成者として知られています。
師にあたる荀子じゅんしの性悪説を受け継ぎ、人は放っておけば自分の利害のままに動くとして、礼による徳化ではなく法による統治を説いた、徹底して人間不信の政治思想家でした。

その韓非かんぴが『韓非かんぴ子』の中で、要領よく立ち回った家臣よりも、不器用でも情に厚かった家臣のほうが最後には信頼されたという逸話を書き残しているのは、人間の狡猾さを見抜く思想家が、同時に飾らない誠実さの価値も見抜いていたことを示しています。

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