意味
大巧は拙なるが若しとは、本当に技術のすぐれた人ほど、小細工や飾り気がないため、一見下手に見えるという意味です。
真の熟練は、簡素で自然なふるまいの中に表れることを説く言葉です。
- 大巧(たいこう):非常にすぐれた技巧。
- 拙(せつ):へたなこと、つたないさま。
語源・由来
出典は中国の思想書『老子』第四十五章です。
「大直若屈、大巧若拙、大弁若訥」(本当にまっすぐな者は曲がっているように見え、本当に巧みな者は下手なように見え、本当に雄弁な者は口下手なように見える)という一節に由来します。
飾らず、自然のままであることを理想とする老子の思想を表す言葉の一つとされています。
使い方・例文
大巧は拙なるが若しは、飾り気のない自然な仕事ぶりの中に高い技術がにじむ様子をたたえる場面で使われます。
- あの職人の無駄のない仕事ぶりは、大巧は拙なるが若しを思わせる。
- 名人の点前ほど大巧は拙なるが若しで、力みが感じられない。
- 一流の文章ほど大巧は拙なるが若し、飾り立てた表現が少ない。
類義語・関連語
大巧は拙なるが若しと同様に、実力を誇示しない自然な態度を表す言葉には、以下のようなものがあります。
英語表現
大巧は拙なるが若しと近いニュアンスを持つ英語表現には、以下のようなものがあります。
Less is more
直訳は「少ないほど豊かである」。装飾を削ぎ落としたシンプルさの中にこそ本質的な価値が宿るという考え方を表す表現。建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉として広まった。
The designer trimmed every unnecessary detail, proving that less is more.
(そのデザイナーは無駄な要素をすべて削ぎ落とし、少ないほど豊かであることを証明した。)
「大拙」という号の由来
禅の思想を海外に広めた仏教学者・鈴木大拙(すずきだいせつ)の「大拙」という号は、この『老子』第四十五章の「大巧は拙なるが若し」に由来するといわれています。
飾り気のない自然体こそが本物の到達点であるという老子の思想は、近代日本の思想家の名前にも取り入れられました。
古典の一節が、後世の人物の名乗りにまで影響を与えた例です。











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