意味
「握髪吐哺」とは、来客が賢者であれば、髪を洗う手や食事の箸を止めてでもすぐに会おうとするほど、人材を求める気持ちが強いことを表す四字熟語です。
地位の高い者が、人を軽んじない姿勢を示す言葉としても使われます。
- 握髪(あくはつ):洗いかけの髪を握ってやめること。
- 吐哺(とほ):口の中の食べ物を吐き出すこと。
語源・由来
「握髪吐哺」は、周の政治家である周公旦が、来客への対応を少しも後回しにしなかったという逸話に由来する言葉です。
周公旦は、周の初代王である武王の弟で、幼い甥の成王を補佐して国政を担った人物です。
『史記』魯周公世家には、周公旦自身が「洗髪の最中に客が来れば、濡れた髪を握ったまま迎え、食事の最中に客が来れば、口の中のものを吐き出して迎えてきた」と語ったと記されています。
「握髪吐哺」は、この逸話を要約した言い方です。
使い方・例文
「握髪吐哺」は、地位の高い人物が来客や人材への対応を最優先する姿勢を評する場面で使われます。
- 来客と聞くや会議を中断する社長の握髪吐哺ぶりに驚いた。
- 握髪吐哺の心がけで、部下からの相談にはすぐ応じる。
類義語・関連語
「握髪吐哺」と同様に、すぐれた人材を求めることに熱心な様子を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 吐哺握髪(とほあくはつ):握髪吐哺の語順を入れ替えた言い方。意味は同じ。
- 一饋十起(いっきじっき):一度の食事の間に十回も席を立つほど、賢者の意見を求めることに熱心なこと。
「握髪吐哺」と「一饋十起」の違い
どちらも人材への熱心さを表しますが、力点が異なります。
「握髪吐哺」は客を待たせず迎える姿勢に、「一饋十起」は自分から賢者の意見を求めに立つ姿勢に重きを置いています。
| 語句 | 力点 |
|---|---|
| 握髪吐哺 (あくはつとほ) | 客を待たせずに迎える |
| 一饋十起 (いっきじっき) | 自分から意見を求めに立つ |
英語表現
an open-door policy
直訳は「開いた扉の方針」。上司や経営者が予約なしにいつでも相談を受け付けるという意味の表現で、人材への対応を最優先する姿勢を示す点が「握髪吐哺」に近い。
The CEO is known for having an open-door policy.
(その最高経営責任者は、いつでも面会に応じる方針で知られている。)
魯へ発つ息子に贈った戒め
周公旦がこの話をしたのは、自分の息子である伯禽を、諸侯の国である魯の統治者として送り出す場面でした。
『史記』には、周公旦が伯禽に、身分の高さを理由に人におごってはならないと言い添えたと記されています。
握髪吐哺の逸話は、単なる来客への礼儀作法ではなく、高い身分にある者ほど人材を軽んじやすいという油断への戒めとして、旅立つ息子への言葉に添えられていたことになります。










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