意味
「煙に巻く」は、立ち込める煙で視界を奪うように、まくし立てる言葉で相手の頭を混乱させ、こちらの意図や本音を悟らせないようにすることを表します。
丁寧に説明されているように感じても実際は言いくるめられているだけ、という場面で使われるため、話し手に対する不信感を伴う否定的な意味合いを持ちます。
語源・由来
「煙に巻く」は、煙で辺り一面を覆ってしまえば何も見えなくなるという、単純な物理現象からきた言い回しです。
視界を奪われた人はその場の状況を把握できず、なすすべもなく相手のペースに乗せられてしまいます。
忍者が煙を使って自分の姿を消したという言い伝えが、このイメージを後押ししたという説もあります。
言葉を次々に浴びせて相手の理解を追いつかせない話し方を、姿をくらます技になぞらえた表現といえます。
使い方・例文
「煙に巻く」は、質問をはぐらかされたり話をすり替えられたりして、要領を得ない気持ちにさせられた場面で使われます。
- 専門用語ばかりの説明で記者を煙に巻いた大臣に、会場からため息が漏れた。
- 都合の悪い話になると、彼はいつも早口で煙に巻く。
読み方の注意
「煙に巻く」は「けむにまく」と読み、「けむりにまく」とは読みません。
「煙」は名詞として読めば「けむり」ですが、この言葉に限っては古い言い方の「けむ」を使うのが正しい読み方です。
類義語・関連語
「煙に巻く」と同じように、話術や態度で相手を惑わせる場面を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 丸め込む(まるめこむ):
言葉巧みに説得し、自分の思うとおりに従わせること。 - 煙幕を張る(えんまくをはる):
本当の目的や事情を隠すため、わざと紛らわしい言動を取ること。 - はぐらかす:
質問や話の要点をわざとそらし、まともに答えないこと。
「煙に巻く」と「はぐらかす」の違い
どちらも本音や要点を隠す点は共通しますが、働きかけの量に違いがあります。
「煙に巻く」は大量の言葉で相手を圧倒して思考を止めさせるのに対し、「はぐらかす」は話の方向を変えるだけの軽い受け流しです。
| 語句 | アプローチ | 相手の状態 |
|---|---|---|
| 煙に巻く | 大量の言葉で圧倒する | 混乱して判断できなくなる |
| はぐらかす | 話の方向をそらす | 質問の答えを得られない |
英語表現
blow smoke
根拠のない誇張やごまかしの発言で相手の目をくらませる、という意味の表現。舞台の演者が煙や霧で観客の目を欺いた興行の慣習に由来するとされる。
Don’t trust him, he’s just blowing smoke.
(彼を信用してはいけません、ただ煙に巻いているだけです。)
1862年の歌舞伎に残る「煙に巻く」の記録
「煙に巻く」という言い方が使われた記録のひとつに、1862年(文久2年)に上演された歌舞伎「勧善懲悪覗機関」があります。
江戸時代末期にはすでに、この言い回しが芝居の台詞として通じる表現になっていたことがうかがえます。
煙が視界と方向感覚の両方を一瞬で奪うことから、大げさな話や難しい話で相手を圧倒し、判断力を鈍らせて丸め込むことのたとえとして使われるようになりました。









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