慣用句

筆を起こす

(ふでをおこす)

文章や物語などを書き始めること。


6文字の言葉ふ・ぶ・ぷ」から始まる言葉
筆を起こす ことば
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意味

「筆を起こす」は、真っ白な紙に向かい、いよいよ文章を書き始めることを表す言い方です。単なる作業の開始ではなく、これから物語や文章を綴っていく最初の一歩を踏み出す場面を、やや改まった調子で表す慣用句です。

語源・由来

「筆を起こす」という言い方は、実際に筆を手に取り、紙に穂先を下ろして文字を書き始める、その一連の動作をそのまま言葉にしたものです。書道の世界では、点や画の書き出し部分を「起筆(きひつ)」と呼び、紙に筆先を触れさせてから最初の一画を書き進める動きを指します。

文章を書くことも、かつては筆と墨で行うのが当たり前でした。真っ白な紙に筆先を下ろす瞬間の張り詰めた気持ちが、そのまま「書き始める」という意味の言葉に重ねられています。

使い方・例文

「筆を起こす」は、小説やエッセイ、手紙など、何かを書き始める場面で使われます。

  • 何度も構成を練り直し、ようやく筆を起こすことができた。
  • 締め切りが迫り、重い腰を上げてやっと筆を起こした

対義語

「筆を起こす」とは反対に、文章を書き終えることを表す言葉に、次のものがあります。

  • 筆を擱く(ふでをおく):文章を書き終えること。

「筆を置く」は誤り

「筆を起こす」の反対にあたる「筆を擱く」は、「筆を置く」と書き間違えられることがありますが、これは誤りです。「擱く」は動きを止めるという意味を持つ字で、机の上に物を置くときの「置く」とは別の漢字です。

類義語・関連語

「筆を起こす」と同じく、文章を書き始めることを表す言葉には、次のようなものがあります。

  • 筆を執る(ふでをとる):文章や絵をかくために、筆を手に取ること。
  • 筆を下ろす(ふでをおろす):新しい筆を初めて使うこと。転じて書き始めること。
  • 起筆(きひつ):文字や文章を書き始めること。

「筆を起こす」と「起筆」の違い

どちらも書き始めることを指しますが、使われる場面の広さが異なります。「筆を起こす」は文章や作品を書き始める行為全般を表す日常的な言い方であるのに対し、「起筆」は書道において一画目を書き出す技法を指す専門的な言葉です。

語句使われる場面指す範囲
筆を起こす
(ふでをおこす)
日常やエッセイ等の書き始め全般作品や文章を書き始める行為
起筆
(きひつ)
書道の専門的な文脈一画目の書き出しの技法

英語表現

put pen to paper

いよいよ実際に文字を書き始めるという意味を表す表現。

After months of research, she finally put pen to paper.
(何ヶ月もの調査を経て、彼女はついに筆を起こした。)

曲亭馬琴が日付まで記した「筆を起こす」

「筆を起こす」という言い方が使われた古い例のひとつに、曲亭馬琴が1807年から1811年にかけて発表した読本『椿説弓張月ちんせつゆみはりづき』があります。
作中には「季秋初の四日に筆を起し、同十九日に草し了(お)わる」という一節があり、いつ書き始め、いつ書き終えたかまで具体的に記されています。

江戸時代の書き手にとって、実際に毛筆を執って原稿を書き始める瞬間を指す、文字どおりの表現だったことがうかがえます。
道具が筆からペン、キーボードへと変わった後も、書き始めることそのものを指す言葉として現在まで使われ続けています。

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