意味
「造次顛沛」とは、とっさの場合や、つまずいて倒れるような余裕のない瞬間を指す四字熟語です。
単独で使われることはほとんどなく、「〜にも」という形を伴って、どんなに慌ただしい状況でも心構えが変わらないことを強調する場合に用いられます。
- 造次(ぞうじ):あわただしいこと、とっさの場合。
- 顛沛(てんぱい):つまずいて倒れること。
語源・由来
「造次顛沛」は、中国の思想家である孔子の言葉をまとめた『論語』の里仁篇に出てきます。
「君子は食を終うる間も仁に違うこと無し。造次にも必ず是に於いてし、顛沛にも必ず是に於いてす」という一節があり、現代語に訳すと「立派な人物は、食事をとる間でさえ仁の心から離れることはない。とっさの場合でも、つまずいて倒れるような場合でも、必ずこの仁の心に従う」という意味になります。
あわただしい瞬間やとっさの場合であっても、人としての正しい心構えを失わないことを説いた言葉です。
使い方・例文
「造次顛沛」は、書き言葉やスピーチなど、改まった場面で副詞的に使われます。
- 彼は造次顛沛、常に礼儀正しい態度を崩さなかった。
- どんな緊急事態でも造次顛沛、冷静さを失わないよう心がけたい。
『ヰタ・セクスアリス』(森鴎外)
主人公の意識のあり方を語る場面で、日常のあらゆる立ち居振る舞いを包括する言葉として使われています。
その作中の人物が、行住坐臥造次顛沛、何に就けても性欲的写象を伴うのを見て
二つの四字熟語が並ぶとき
「造次顛沛」は単独で主語や目的語になることがほとんどなく、「造次にも顛沛にも」のように、必ず「〜にも」を伴う言い方で使われます。
森鷗外の小説には「行住坐臥造次顛沛」という形で使われた例があり、日常のあらゆる立ち居振る舞いを表す「行住坐臥」と、とっさの瞬間を表す「造次顛沛」を重ねることで、「どんな状況であっても例外なく」という意味を一段と強めています。
性質の異なる二つの四字熟語を並べて意味を強める組み立ては、漢文に由来する言葉に見られる特徴の一つです。










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