意味
「舌の根の乾かぬうち(したのねのかわかぬうち)」とは、口にした言葉の余韻も消えないうちに、その内容と矛盾する言動をしてしまうという意味です。
単に「早い」ことを述べているのではなく、相手の発言の軽さや信用のできなさを咎める、非難めいた響きを伴って使われます。
語源・由来
「舌の根の乾かぬうち」は、話し終えた直後でまだ舌が湿っている、というごく短い時間の感覚を比喩にした言葉です。
約束を破ったり嘘をついたりすると口の中が渇く、という言い伝えが背景にあるという説もあり、嘘をつくことと舌の乾きを結び付ける発想が、この言葉の下地になっているとみられます。
「舌の根も乾かぬうち」という「も」を使った形も広く使われています。
使い方・例文
「舌の根の乾かぬうち」は、約束や発言をした本人が、すぐにそれと矛盾する行動を取ったときに、あきれや非難を込めて使われます。
- 「今度こそ最後だ」と言った舌の根の乾かぬうちに、また高い買い物をしてしまった。
- 禁煙すると宣言した舌の根の乾かぬうちに、もう一服していた。
類義語・関連語
「舌の根の乾かぬうち」と同じように、言ったことの直後に矛盾が生じる様子を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 言ったそばから:
何かを言った直後に、それと食い違うことが起こる様子。
「舌の根の乾かぬうち」と「言ったそばから」の違い
どちらも直後の食い違いを表しますが、対象と響きが異なります。
「舌の根の乾かぬうち」は主に自分の発言が裏切られる場面で使われ、強い非難の響きを伴うのに対し、「言ったそばから」は発言に限らず行動にも使え、もっと軽い調子でも使われます。
| 語句 | 対象 | 響き |
|---|---|---|
| 舌の根の乾かぬうち (したのねのかわかぬうち) | 主に発言の食い違い | 強い非難 |
| 言ったそばから (いったそばから) | 発言・行動どちらも | 軽い驚き〜非難 |
英語表現
before the ink is dry
直訳は「インクが乾く前に」。
契約や約束が成立した直後に、早くもそれが破られる様子を表す表現。
He broke the promise before the ink was dry on the contract.
(契約書のインクも乾かぬうちに、彼は約束を破った。)
大岡政談を演じた歌舞伎の舞台から
「舌の根の乾かぬうち」の使用例としてよく挙げられるのが、1875年(明治8年)に上演された歌舞伎「扇音々大岡政談」の一場面です。
「持つべきものは家来なりとお褒めなされし其の舌の乾かぬうちに打って替り」という台詞があり、褒め言葉を口にした直後に態度を翻す様子を描いています。
「舌の根」は、舌の付け根、つまり口の中でも乾きにくい部分を指します。
話し終えて舌が乾く間もないほどの短い時間のうちに、前言と矛盾した言動をとることへの非難として使われてきました。
歌舞伎の台詞として広まった言い回しは、明治以降も口語表現として定着し、約束や発言をすぐに覆す相手を非難する際の言葉として、日常会話に受け継がれています。










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