意味
「魯魚亥豕(ろぎょがいし)」とは、写本や印刷の際に形の似た漢字を取り違えて書き誤ることを指す四字熟語です。
校正や文献研究など文字を扱う場面で使われる、やや手厳しい響きを持つ言葉です。
語源・由来
「魯魚亥豕」は、字形の似た二組の文字にまつわる、それぞれ別の故事に由来する四字熟語です。
中国の書物『呂氏春秋』の「察伝」には、儒者の子夏が晋へ向かう道中、衛の国で歴史の記録を読み上げる声を耳にした話が載っています。「晋の軍が三頭の豚(三豕)で川を渡った」という一節に子夏は違和感を覚え、「それは『己亥』の日に渡ったの誤りだろう。『己』は『三』に、『豕』は『亥』に字形が似ている」と指摘しました。
晋の国で確かめると、記録は果たして子夏の指摘どおり「己亥」だったといいます。
もう一組の「魯魚」については、東晋の書物『抱朴子』にも、書物を三度書き写すと「魚」の字が「魯」に、「虚」の字が「虎」に変わってしまうという指摘が伝えられています。
手で一冊ずつ書き写していた時代には、こうして字形の似た文字が紛れ込みやすかったことがうかがえます。
使い方・例文
「魯魚亥豕」は、文章の校正や書き写しの正確さを話題にする、ややかたい場面で使われます。
- 古い写本の研究では、魯魚亥豕をいかに見抜くかが腕の見せ所だ。
- 校正者は魯魚亥豕を防ぐため、一字ずつ声に出して確かめる。
- 「専門」と「専問」、魯魚亥豕とはまさにこのことだ。
類義語・関連語
「魯魚亥豕」と同じく、文字の書き誤りを表す言葉には、次のようなものがあります。
- 烏焉の誤り(うえんのあやまり):
「烏」と「焉」の字形が似ていることによる書き誤り。 - 魯魚烏焉の誤り(ろぎょうえんのあやまり):
魯魚亥豕と烏焉の誤りを合わせた言い方。
「魯魚亥豕」と「誤字脱字」の違い
同じ「書き間違い」を表す言葉でも、原因を限定するかどうかで使い分けが分かれます。
「魯魚亥豕」は字形の似た文字を取り違えた場合に限る呼び方で、「誤字脱字」は原因を問わず書き間違い全般を指す、より日常的な言葉です。
| 語句 | 原因 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 魯魚亥豕 (ろぎょがいし) | 字形の類似に限る | 校正・文献研究などかたい文脈 |
| 誤字脱字 (ごじだつじ) | 原因を問わない書き間違い全般 | 日常のあらゆる文章 |
英語表現
a slip of the pen
うっかりした書き間違いを指す表現。字形の似た文字に限らず使える、やや広い言い方。
The report contained a date that was clearly a slip of the pen.
(その報告書の日付は、明らかにうっかりした書き間違いだった。)
「三頭の豚」の記録を見破った男
「魯魚亥豕」の「魯魚」は、中国東晋の学者・葛洪の著書「抱朴子」にある「書を三たび写せば、魚は魯となり、虚は虎となる」という言葉に由来します。
文字を何度も書き写すうちに、形の似た漢字が別の字に変わってしまうことを指摘したものです。
「亥豕」の由来は、中国戦国時代の書物「呂氏春秋」察伝篇にある逸話です。
ある人が書物を読んで「晋の軍が三頭の豚を連れて川を渡った」と口にしたのを、孔子の弟子である子夏が聞き、その「三豕」は日付を表す文字「己亥」の書き誤りだろうと正したという話です。
文字の形が似ていることで生じる書き写しの誤りを指摘したこれら二つの故事が組み合わさって、「魯魚亥豕」という四字熟語になりました。









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