意味
「酔歩蹣跚(すいほまんさん)」とは、酒に酔って足元がおぼつかず、ふらふらとよろけながら歩くという意味です。
単に千鳥足で歩くというよりも、酔っている人の頼りない足取りを、やや古風な言い回しで描写する四字熟語です。
- 酔歩(すいほ):
酒に酔った状態で歩くこと、またその足取り。 - 蹣跚(まんさん):
よろよろとよろめく様子。
語源・由来
「蹣跚」は、酒に酔うこととは切り離しても使われる、よろめく足取りそのものを表す古い言葉です。
夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の九には、苦沙弥のもとに届いた手紙の中に「酔漢漫りに胡乱の言辞を弄して、蹣跚として墓に向う(酔っぱらいがでたらめなことを言いながら、よろめきながら墓に向かう)」という一節があります。
「酔歩蹣跚」は、この「蹣跚」に「酔歩」を重ねることで、酒に酔ってよろめく場面であることを一目で示す四字熟語として定着したとみられます。
使い方・例文
「酔歩蹣跚」は、酒席の後の様子を、やや古風な言い回しで描写する場面で使われます。
- 忘年会帰りの上司は、酔歩蹣跚として夜道を歩いていった。
- 祝杯を重ねすぎた花婿は、披露宴の後半には酔歩蹣跚の有様だった。
類義語・関連語
「酔歩蹣跚」と同じく、酒に酔ったときの足取りを表す言葉に、次のようなものがあります。
- 千鳥足(ちどりあし):
酒に酔って、あちこちに揺れながら歩く足取り。
「酔歩蹣跚」と「千鳥足」の違い
「千鳥足」がふらつく足取りの形そのものを指す日常語であるのに対し、「酔歩蹣跚」は歩き方に加えて酔った人物の頼りない様子全体を描写する、漢語調のやや文語的な言葉です。
| 語句 | 特徴 |
|---|---|
| 酔歩蹣跚 (すいほまんさん) | 漢語調でやや文語的な言い回し |
| 千鳥足 (ちどりあし) | 日常語として広く使われる言い方 |
英語表現
stagger
直訳は「よろめく」。
足元が定まらず、ふらふらと不安定に歩く様子を表す表現。
He staggered home after one too many drinks at the party.
(彼はパーティーで飲みすぎて、酔歩蹣跚としながら家に帰った。)
three sheets to the wind
直訳は「帆綱が三本とも風にはためいている」。
すっかり酔っ払って、まともに立っていられない状態を表す表現。
By midnight, the groom was three sheets to the wind and could barely stand.
(真夜中には、花婿はすっかり酔歩蹣跚の状態で、まともに立っていられなかった。)
『美徳のよろめき』が生んだ流行語
「蹣跚」は、酔歩蹣跚では「まんさん」という音読みで使われますが、訓読みでは「蹣跚める(よろめく)」という動詞になります。
この「よろめく」は、足元がふらつく意味だけでなく、既婚の女性が他の男性に心を寄せることを指す言い方としても、昭和の一時期に広く使われました。
きっかけは、三島由紀夫が1957年に発表した小説『美徳のよろめき』で、この言葉が流行してからは、同様の題材を扱うテレビドラマが「よろめきドラマ」と呼ばれるようになりました。
足元の千鳥足も、心の迷いも、同じ「よろめく」という一つの動詞で表されてきました。









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