意味
鬼哭啾啾とは、浮かばれない亡霊が上げる泣き声(鬼哭)と、その声が細く尾を引いて響くさま(啾啾)を組み合わせ、亡霊の泣き声が辺りに満ちるような、恐ろしく物悲しい光景を表す四字熟語です。
実際に霊が出る場面に限らず、悲劇のあった場所の陰惨な雰囲気や、荒れ果てた戦場の様子を形容する際にも使われます。
- 鬼哭(きこく):
浮かばれない霊が、恨みや無念さから泣くこと。 - 啾啾(しゅうしゅう):
小さくかすれた声で、しくしくと泣き続けるさま。
語源・由来
鬼哭啾啾を形づくる「鬼哭」と「啾啾」は、唐代の詩人杜甫の詩「兵車行」に登場する言葉です。
この詩は、戦争に駆り出されて青海の地で命を落とした兵士たちを描いた一節で、「新たに死んだ霊が無念を訴え、古い霊が泣き、雨曇りの空にその声がしくしくと響く」という情景の中で、「鬼哭」と「啾啾」がともに使われています。
使い方・例文
鬼哭啾啾は、心霊的な現象を語る場面だけでなく、悲惨な歴史を持つ場所の陰鬱な雰囲気を形容する際にも使われます。
- 廃墟となった病院跡は、まさに鬼哭啾啾とした空気に包まれていた。
- 夜の古戦場跡には、鬼哭啾啾とした気配が漂うと言われる。
類義語・関連語
鬼哭啾啾と同じく、恐ろしく物寂しい雰囲気を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 陰々滅々(いんいんめつめつ):
気持ちが沈み込むほど、暗く物寂しい雰囲気に満ちている様子。
「鬼哭啾啾」と「陰々滅々」の違い
どちらも暗く陰惨な雰囲気を表しますが、その陰惨さがどこから来るのかという点が異なります。
| 語句 | 陰惨さの由来 | 声の有無 |
|---|---|---|
| 鬼哭啾啾 (きこくしゅうしゅう) | 亡霊の泣き声という具体的なイメージ | 泣き声を伴う |
| 陰々滅々 (いんいんめつめつ) | 場や気分そのものの暗さ | 声を伴わない |
対義語
鬼哭啾啾とは反対に、心が通じ合う温かい雰囲気を表す言葉には、次のものがあります。
- 和気藹々(わきあいあい):
人々の心が通じ合い、温かくなごやかな雰囲気に満ちている様子。
英語表現
give someone the creeps
直訳は「誰かに鳥肌を与える」で、不気味で薄気味悪い雰囲気が人を怖がらせる様子を表す表現。
The abandoned hospital gave us the creeps as we walked through its dark corridors.
(廃病院の暗い廊下を歩いていると、鬼哭啾啾とした雰囲気に鳥肌が立ちました。)
send shivers down your spine
直訳は「背筋に震えを送る」で、恐ろしさや不気味さのあまり体が震えるほどの感覚を表す表現。
The old battlefield’s silence sent shivers down my spine.
(古戦場の静けさは、鬼哭啾啾たる気配で背筋を震わせました。)
馬のいななきと亡霊の泣き声
鬼哭啾啾の「啾啾」のように、同じ漢字を二つ重ねて音を表す言葉は、中国の古い漢詩に数多く見られる技法です。
この四字熟語のもとになった詩の冒頭にも「車轔々(しゃりんりん)、馬蕭々(ばしょうしょう)」という一節があり、車輪の音、馬のいななきをそれぞれ重ね字で表現しています。
一つの詩の中で、戦場へ向かう車輪や馬の音と、戦場に散った霊の泣き声が、同じ重ね字の技法で描き分けられています。
日本語の「がやがや」「しくしく」のような擬音語の繰り返しの型とも、発想の面で共通しています。









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