慣用句 故事成語

兄たり難く弟たり難し

(けいたりがたくていたりがたし)

二つともすぐれていて、どちらが上とも決めがたいこと。


14文字の言葉 / 「け・げ」から始まる言葉
兄たり難く弟たり難し ことば
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意味

「兄たり難く弟たり難し(けいたりがたくていたりがたし)」とは、比べる二人や二つの物がどちらも優れていて、優劣がつけられないという意味です。
「兄」と「弟」は上と下のたとえで、兄(上)とするのも弟(下)とするのも難しい、という組み立てです。

  • たり:〜である。
  • 難し(がたし):〜するのが難しい。

語源・由来

この言葉は、中国の『世説新語せせつしんご』(= 後漢から東晋までの人物の逸話を集めた書物)の徳行とくこう篇にある話から生まれました。
後漢の陳寔ちんしょくには、元方げんぽう(長男の陳紀ちんき)と季方きほう(末の子の陳諶ちんしん)という息子がいました。
その孫どうしが言い争ったときの、次の一節が由来です。

陳元方子長文有英才,與季方子孝先,各論其父功德,爭之不能決,咨於太丘。太丘曰:「元方難爲兄,季方難爲弟。」
(元方げんぽうの子の長文ちょうぶんは優れた才能があり、季方きほうの子の孝先こうせんと、それぞれ自分の父の功績と徳を言い立てたが、争っても決着がつかず、太丘たいきゅうに尋ねた。太丘たいきゅうは「元方げんぽうは兄だから上とするのは難しく、季方きほうは弟だから下とするのも難しい」と答えた)

太丘たいきゅうは陳寔ちんしょくが長官を務めた県の名で、ここでは祖父の陳寔ちんしょくを指します。
答えの「元方難爲兄,季方難爲弟」から人名を除いて訓読した形が、見出しの言葉です。

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使い方・例文

もとは兄弟の優劣をめぐる話ですが、人に限らず、二つの作品や物事を比べるときにも使います。

  • 決勝に残った二作品は兄たり難く弟たり難しで、審査員も頭を抱えた。
  • 先輩二人の演奏はどちらも見事で、まさに兄たり難く弟たり難しだ。
  • 二人の候補はどちらも実績十分で、兄たり難く弟たり難しという評価だった。

類義語・関連語

どれも、比べる相手との優劣がつけにくいことを言う語です。

  • 伯仲(はくちゅう):
    力がつりあっていて、優劣のつけがたいこと。もとは兄と弟、長兄と次兄の意。
  • いずれ菖蒲か杜若(いずれあやめかかきつばた):
    どちらも同じようで区別がつけにくく、一つを選ぶのに迷うたとえ。
  • 甲乙付け難い(こうおつつけがたい):
    二つのうちどちらが上か、決めかねる様子。

「兄たり難く弟たり難し」と「団栗の背比べ」の違い

「団栗の背比べ」も優劣がつけにくいことを言いますが、どれも平凡で、特に優れたものがない場合に使います。
「兄たり難く弟たり難し」は、両方とも優れている場合に使う点が逆です。

「兄たり難く弟たり難し」の父子三人は「三君」と呼ばれた

この一節には、後の時代に注が付けられています。
注に引かれた『先賢行状せんけんぎょうじょう』によると、元方げんぽうは父の陳寔ちんしょくと並ぶほど名高く、弟の季方きほうもそれに肩を並べたので、三人は世に「三君」と呼ばれました。
争った孫のうち長文ちょうぶんは名を陳群ちんぐんといい、祖父の陳寔ちんしょくは一族の者に「此兒必興吾宗」(この子は必ずわが一族を盛んにする)と語ったと、同じく注に引かれた『魏書』にあります。
同じ徳行とくこう篇の少し前には、陳寔ちんしょくが知人の家を訪ねたとき、元方げんぽうが車を操り、季方きほうが杖を持って後に従い、幼い長文ちょうぶんは車に乗せられていた、という話も載っています。

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