慣用句 故事成語

会稽の恥を雪ぐ

(かいけいのはじをすすぐ)

敗戦などで受けた屈辱を晴らし、名誉を取り戻すこと。

短縮形:会稽の恥
異形:会稽の恥をすすぐ/会稽の恥をそそぐ

11文字の言葉 / 「か・が」から始まる言葉
会稽の恥を雪ぐ ことば
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意味

「会稽の恥を雪ぐ(かいけいのはじをすすぐ)」とは、以前に受けたひどい屈辱を晴らすという意味です。
「会稽の恥」は戦いに敗れて受けた屈辱のことで、のちに相手に勝つなどして恥を消し去り、名誉を取り戻す場面で使います。
「雪ぐ」は「すすぐ」と読み、「そそぐ」とも読まれます。

  • 会稽(かいけい):中国の浙江せっこう省にある山の名。
  • 雪ぐ(すすぐ):恥や汚名を取り除く。

語源・由来

この言葉は、中国の歴史書『史記』の「越王勾践こうせん世家」(= 越の王家の歴史を記した巻)にある話から出ています。

紀元前五世紀、越の王の勾践こうせんは、隣の国の呉の王夫差ふさと戦って敗れ、会稽山に追い詰められました。
勾践は家臣の范蠡はんれいの助言を受けて降伏を申し出て、命を助けられます。
このとき受けた辱めが「会稽の恥」です。
国に戻ってからの勾践のことが、次のように書かれています。

呉旣赦越,越王句踐反國,乃苦身焦思,置膽於坐,坐臥卽仰膽,飲食亦嘗膽也。曰:「女忘會稽之恥邪?」
(呉が越を許すと、越王の句践は国に帰り、身を苦しめ心を砕いた。胆を座席のそばに置き、座っても寝ても胆を仰ぎ見て、飲み食いのときにも胆をなめた。そして「おまえは会稽の恥を忘れたのか」と自分に言い聞かせた。)

『史記』では、王の名は「句践」と書かれています。
勾践は范蠡はんれいらとともに国の力を蓄え、二十年余りのちに呉を滅ぼして、会稽の恥を晴らしました。

使い方・例文

  • 昨年の決勝で大敗したチームが、同じ相手を破って会稽の恥を雪いだ。
  • 倒産寸前まで追い込まれた町工場が、十年後に業界一となって会稽の恥を雪いだ。
  • 前回の選挙で落選した候補者は、「必ず会稽の恥を雪ぐ」と支持者に誓った。
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類義語・関連語

「雪辱」と「名誉挽回」は意味の近い言葉、「臥薪嘗胆」は同じ呉と越の争いから出た言葉です。

  • 雪辱(せつじょく):
    恥をすすぐこと。今は特に、前に負けた相手に勝って名誉を取り戻す意で使う語。
  • 名誉挽回(めいよばんかい):
    一度失った名誉を取り戻すこと。
  • 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
    仕返しや目的を果たすために、長い間つらい思いに耐えて努力する意。

「会稽の恥を雪ぐ」と「臥薪嘗胆」の違い

どちらも、勾践が苦い胆をなめて会稽の恥を忘れまいとした話に関わる言葉です。
「臥薪嘗胆」は仕返しや目的を果たすまでの間、苦労を重ねることを言い、「会稽の恥を雪ぐ」は苦労の末に屈辱を晴らすことを言います。
なお「臥薪」は、父のかたきを忘れまいと薪たきぎの上に寝た呉王夫差ふさの話で、勾践の話ではありません。

呉を滅ぼした范蠡、舟で越を去る

『史記』の同じ巻には、呉を滅ぼしたあとの范蠡はんれいのことも書かれています。
范蠡は、大きな名声のもとに長くとどまるのは難しいと考え、勾践に別れの手紙を書きました。

臣聞主憂臣勞,主辱臣死。昔者君王辱於會稽,所以不死,爲此事也。今旣以雪恥,臣請從會稽之誅。
(主君が憂えれば臣下は苦労し、主君が辱めを受ければ臣下は死ぬものと聞いています。かつて王が会稽で辱めを受けたとき、私が死ななかったのは、この仕事のためでした。今はもう恥を雪ぎましたので、会稽のときに受けるはずだった罰をお受けしたいと思います。)

手紙の中で、范蠡も「雪恥」(= 恥を雪ぐ)という言葉を使っています。
勾践は引き止めましたが、范蠡は財宝を持って舟で海に出て、二度と戻りませんでした。
のちに陶とうの地に住んで大きな富を築き、陶朱公とうしゅこうと呼ばれたと伝えられています。

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