善く泳ぐ者は溺る

ことわざ
善く泳ぐ者は溺る(よくおよぐものはおぼる)
異形:善く泳ぐ者は流るる

11文字の言葉」から始まる言葉

「自分は得意だから大丈夫!」そう思っていることほど、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

「善く泳ぐ者は溺る」ということわざは、まさにそんな状況を教えてくれます。

この記事では、「善く泳ぐ者は溺る」の意味や由来、使い方、似た言葉や反対の言葉、英語での表現などを分かりやすく解説します。

「善く泳ぐ者は溺る」の意味・教訓

「善く泳ぐ者は溺る」とは、泳ぎが上手な人ほど、自分の技術を過信したり油断したりして、かえって水難事故にあいやすいという意味のことわざです。

転じて、どんなに得意なことでも、過信や油断が失敗を招く原因になるという教訓を示しています。
自分の能力におごることなく、常に慎重であるべきだと教えてくれる言葉です。

「善く泳ぐ者は溺る」の語源

このことわざの直接的な語源は、古い中国の文献にさかのぼります。

淮南子えなんじ』という書物の中に、「善くおよぐ者は溺れ、善くる者は」という一節があります。
これは、「泳ぎの上手な者は溺れやすく、乗馬の上手な者は落馬しやすい」という意味です。

ここから、得意なことに対する油断を戒めることわざとして日本に伝わり、定着したと考えられています。

「善く泳ぐ者は溺る」が使われる場面と例文

このことわざは、主に自分の能力や経験を過信して失敗した人や、得意分野で油断している人に対して、戒めや注意喚起として使われます。
ビジネスシーンで経験豊富なベテランが初歩的なミスをした時や、日常生活で慣れた作業中にうっかり事故を起こしてしまった時などに用いられます。

例文

  • 「ベテランの彼がまさかあんなミスをするなんて。「善く泳ぐ者は溺る」とはこのことだ。」
  • 「簡単なコースだと油断していたら、転んでしまったよ。「善く泳ぐ者は溺る」だね。」
  • 「「善く泳ぐ者は溺る」と言うでしょう。慣れている仕事ほど、慎重に進めなさい。」

「善く泳ぐ者は溺る」の類義語・言い換え表現

「善く泳ぐ者は溺る」と似た意味を持つことわざや慣用句はたくさんあります。
油断や過信を戒める点が共通しています。

  • 油断大敵:油断は失敗を招く最大の敵であるということ。
  • 弘法にも筆の誤り:書道の名人である弘法大師空海でさえ、時には書き損じることがある。名人や達人でも失敗はあるというたとえ。
  • 猿も木から落ちる:木登りが得意な猿でも、時には木から落ちることがある。その道の専門家でも失敗することがあるというたとえ。
  • 河童の川流れ(かっぱのかわながれ):泳ぎが得意なはずの河童でも、時には川に流されることがある。名人・達人も油断すると失敗するというたとえ。「善く泳ぐ者は溺る」と特に意味が近い。
  • 上手の手から水が漏れる:物事に慣れて上手な人でも、時には思いがけない失敗をするものだというたとえ。

「善く泳ぐ者は溺る」の対義語

「善く泳ぐ者は溺る」とは反対に、慎重さや経験の重要性を示す言葉が対義語として考えられます。

  • 転ばぬ先の杖:失敗しないように、前もって用心しておくことのたとえ。
    ※油断せず、常に備える姿勢を示す点で対照的。
  • 念には念を入れよ:注意した上にもさらに注意すること。用心の上にも用心せよという戒め。
    ※慎重さを強調する点で、「善く泳ぐ者は溺る」が戒める油断と対極にある。
  • 亀の甲より年の功:年の功(長年の経験)は、固い亀の甲羅のように頼りになるということ。経験の重要性を示す。
    ※過信ではなく、経験に裏打ちされた確実性を重んじる点で対照的。

「善く泳ぐ者は溺る」の英語での類似表現

英語にも、「善く泳ぐ者は溺る」と似たニュアンスを持つ表現があります。

  • Even Homer sometimes nods.
    意味:偉大な詩人ホメロスでさえ居眠りすることがある。(どんな名人でも時には誤りがある)
    ※「弘法にも筆の誤り」に近い表現。
  • Pride comes before a fall.
    意味:驕り(おごり)は破滅の前にやってくる。(慢心は失敗を招く)
    ※過信や慢心が失敗につながる点を指摘する点で類似。
  • Good swimmers are often drowned.
    意味:上手な泳ぎ手はしばしば溺れる。
    ※比較的直訳に近い表現。

まとめ – 善く泳ぐ者は溺るから学ぶ現代の知恵

「善く泳ぐ者は溺る」は、泳ぎが得意な人ほど油断して溺れやすいことから、どんなに得意なことでも過信や油断は禁物であるという教訓を伝えることわざです。

私たちは誰しも、慣れていることや得意なことに対して、つい油断してしまいがちです。
しかし、そんな時こそ「善く泳ぐ者は溺る」の言葉を思い出し、初心に立ち返って慎重に取り組む姿勢が大切です。
このことわざは、謙虚さと注意深さを忘れずにいることの重要性を、時代を超えて教えてくれています。

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