人間の普遍的な性質から一生抜けない習慣、そして自然を愛する風流なこだわりまで、「癖」に関する言葉をまとめました。
誰しもが持つ無意識の行動や偏りを、先人たちがどのように観察し言葉として残してきたのかを紐解きます。
人間の普遍的な性質を表す言葉
- なくて七癖、あって四十八癖(なくてななくせ、あってしじゅうはっくせ):
癖がないように見える人でも七つくらいは癖があり、多い人なら四十八もあるということで、誰にでも多少の癖はあるものだというたとえ。
「なくて」と「七癖」で「ナ」の音をそろえた言い回しで、「七」は、さまざまなという意味合いの数。 - 癖ある馬に能あり(くせあるうまにのうあり):
一癖あるくらいの者のほうが、かえって優れた能力を持っているということ。
優れた人には、どこか普通の人と違うところがあるというたとえ。 - 一癖も二癖もある(ひとくせもふたくせもある):
「一癖」だけでも十分なのに「二癖」まで重ねる強調表現で、一筋縄ではいかない食えない人物を評する際に使われる言い回し。
一生抜けない習慣を表す言葉
- 雀百まで踊り忘れず(すずめひゃくまでおどりわすれず):
若いときに身についた習性は、年をとっても変わらないということ。
雀が死ぬまで飛び跳ねる癖が抜けないことから。古くは道楽者や浮気者について使われることが多かった。 - 三つ子の魂百まで(みつごのたましいひゃくまで):
幼いころの性格は、年をとっても変わらないということ。
「三つ子」は数え年の三歳で、ここでは幼少のころを広く指す。 - 習い性となる(ならいせいとなる):
繰り返した習慣が、ついには生まれつきの性質のようになること。
『書経』太甲上の「習い性と成る」から。 - 習慣は第二の天性(しゅうかんはだいにのてんせい):
習慣の力は大きく、生まれつきの性質と変わらないほど日々の行いに影響するということ。
特定の偏愛や強いこだわりを表す四字熟語
- 煙霞之癖(えんかのへき):
山水の景色を愛してやまない性分を、癖にたとえた言葉。
唐の隠者田游巌が高宗に、自分は「泉石膏肓、煙霞痼疾」(山水を愛する心が治らない病になっている)だと答えた話が知られる。 - 泉石膏肓(せんせきこうこう):
山水を愛する気持ちが、治らない病のように深く身についていること。
「膏肓」は体の奥深くの、治療の届かない所。唐の隠者田游巌が高宗に答えた「泉石膏肓、煙霞痼疾」の言葉から。 - 墨客騒人(ぼっかくそうじん):
「騒人」は屈原が名詩「離騒」を著したことに由来し、詩人を指す言葉。
「墨客」は書画に秀でた人を意味し、両者合わせて風流人を表す。
目立つ癖や困った習性を表す言葉
- 張り子の虎(はりこのとら):
紙を張り重ねて作る郷土玩具で、首がよく振れる構造から頷くだけの人を、中身が空洞なことから見掛け倒しの人を揶揄する言葉。 - 手癖が悪い(てくせがわるい):
他人の物を盗む癖があること。 - 口癖(くちぐせ):
話す本人は意識しないまま繰り返す特定の言葉や言い回しを指し、性格や思考の傾向がにじみ出るとして人物描写にもよく使われる語。 - 悪癖(あくへき):
悪いくせや、よくない習慣を指す漢語。 - 江戸っ子は宵越しの銭を持たぬ(えどっこはよいごしのぜにをもたぬ):
江戸っ子は、その日に得た金をその日のうちに使ってしまい、翌日まで持ち越すようなことはしないということ。
江戸っ子の気前のよさ・金離れのよさを自慢していう言葉。 - 癖になる(くせになる):
一度の経験がきっかけで特定の行動や味を繰り返し求めるようになる現象を指し、良し悪しを問わず日常の様々な場面で使われる表現。
癖を直す・戒める教え
- 矯めるなら若木のうち(ためるならわかぎのうち):
悪い癖や欠点は、柔らかい若木なら枝を曲げて形を整えられるように、若いうちに直すのがよいという教え。
「癖」の多様なニュアンス
「癖(くせ・へき)」という言葉は、現代では直すべきものとして否定的に捉えられがちです。
しかし、必ずしも悪い意味だけではありません。
四字熟語に見られる「煙霞之癖」などの「癖(へき)」は、何かに強く惹かれ、深く愛好する「偏愛」を表しています。
唐の隠者田游巌は、山水を愛してやまない自分を「泉石膏肓、煙霞痼疾」と、治らない病にたとえて皇帝に答えました。









コメント