悲しみのあまり流れ落ちた涙で、着物の袖がぐっしょりと濡れてしまう。
それをぎゅっと絞れるほどに泣き続ける様子を指すのが、「袖を絞る」(そでをしぼる)です。
意味
「袖を絞る」とは、涙で濡れた着物の袖を絞れるほど、激しく泣くという意味です。
古典的な言い回しですが、「ハンカチを絞るほど泣く」といった現代の表現と同じ発想で、悲しみの深さを大げさなまでに強調するニュアンスを持ちます。
- 袖(そで):着物の腕を覆う部分。
- 絞る(しぼる):ねじって水分を出すこと。
語源・由来
「袖を絞る」は、平安時代の和歌に由来する表現です。
平安時代後期に編まれた勅撰和歌集『後拾遺和歌集』に収められた清原元輔の歌に、「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは」という一首があり、これが文献上確認できる古い用例の一つです。
当時の和歌には涙を袖で受け止める描写が数多く見られ、「袖を絞る」もそうした涙にまつわる美意識の中で育まれ、後に一般の言い回しとして定着しました。
使い方・例文
「袖を絞る」は、深い悲しみのあまり激しく泣く様子を語る場面で使われます。
- 恩師との別れに、教え子たちは袖を絞った。
- 悲報を聞いた家族は、その場で袖を絞るばかりだった。
- 映画のラストシーンで、観客の多くが袖を絞った。
類義語・関連語
「袖を絞る」と同じく、激しく泣く様子を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 紅涙を絞る(こうるいをしぼる):
血の涙が出るほど激しく泣くこと。 - 男泣きに泣く(おとこなきになく):
普段涙を見せない人が、こらえきれずに泣くこと。
英語表現
cry one’s eyes out
「目が飛び出るほど泣く」という直訳の通り、激しく泣きじゃくる様子を表す口語的な言い回し。
She cried her eyes out at the funeral.
(彼女は葬儀で袖を絞るほど泣いた。)
涙を「袖」で受け止めた時代
現代ではハンカチやティッシュで涙を拭うのが当たり前ですが、平安時代の人々は主に着物の袖でそれを受け止めていました。
当時の衣服の袖は現在の着物よりもゆったりと大きく、涙を吸わせるのにも十分な大きさがあったとされます。
平安貴族の恋愛や別れを描いた和歌や物語には、袖にまつわる表現が数多く残されており、「袖を濡らす」「袖の露」など、涙を袖と結びつけた言い回しが一つのまとまった型として定着していました。
「袖を絞る」も、そうした涙と衣服を結びつける美意識の系譜に連なる表現です。









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