得意げに語る相手の勢いに圧倒され、どう反応していいか分からず、思わず気まずい顔になる。
そんな心もとない様子を表すのが、「鼻白む」(はなじろむ)です。
意味
「鼻白む」とは、相手の勢いに気後れしたり、その場の雰囲気に興ざめしたりして、きまり悪そうな顔つきになるという意味です。
相手を非難する強い言葉ではなく、圧倒されて言葉を失うような、やや受け身のニュアンスを持つ表現です。
日常会話よりも、文章の中で使われることが多いやや古めかしい響きの言葉です。
- 鼻(はな):顔の中央にある器官。慣用句では体面や自尊心の象徴として使われる。
- 白む(しらむ):血の気が引いて青白くなる、勢いが失われること。
語源・由来
「鼻白む」は、平安時代の物語文学にすでに見られる古い言葉です。
紫式部の『源氏物語』「花宴」の巻には、「さての人々は、皆臆しがちにはなじろめる多かり」という一文があり、周囲の人々が気後れしてとまどう様子を「鼻白む」と表現しています。
「白む」は血の気が引いて色を失うことを意味し、緊張や気後れで表情がこわばる様子を、顔の中心である「鼻」に重ねて表した言葉と考えられています。
使い方・例文
「鼻白む」は、相手の勢いや場の空気に圧倒され、きまり悪くなる場面で使われます。
- 得意げに語る自慢話に、周囲は鼻白んだ表情を浮かべた。
- あまりに堂々とした言い訳に、思わず鼻白んでしまった。
- 場違いな冗談に、会場全体が鼻白む空気に包まれた。
類義語・関連語
「鼻白む」と同様に、場の空気や相手の勢いに圧倒される様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 興ざめする(きょうざめする):
楽しい気分が急に冷めてしまうこと。 - しらける:
場の雰囲気が急に冷え込み、盛り上がりが失われること。
「鼻白む」と「しらける」の違い
両者とも場の空気が悪くなる様子を表しますが、視点に違いがあります。
「鼻白む」は個人の表情や心情に焦点があるのに対し、「しらける」は場全体の雰囲気に焦点があります。
| 語句 | 焦点 |
|---|---|
| 鼻白む (はなじろむ) | 個人の気まずい表情 |
| しらける | 場全体の雰囲気 |
英語表現
be taken aback
予想外の展開に一瞬たじろぐ、驚いて言葉を失うという状態を表す表現。
He was taken aback by her blunt remark.
(彼は彼女の率直な発言に鼻白んだ。)
「白」が表してきた、色を失う感覚
日本語には、「顔が白くなる」「青白い顔」など、血の気が引いた状態を「白」で表す言葉が数多くあります。
これは単なる色の描写ではなく、生命力や気力が抜けていく感覚と結びついた表現です。
平安時代の貴族社会では、顔色は体調や心情を映す指標として重視されており、「白む」という動詞は、色が変わるだけでなく気力や自信が抜け落ちていく心理状態を表す言葉として使われてきました。
「鼻白む」も、顔の中心にある鼻という部位に心の動揺を集約させた、この系譜に連なる表現です。









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