意味
「九鼎大呂(きゅうていたいりょ)」とは、非常に貴重で重要な物事、また揺るぎない地位や名声のたとえです。
国の権威そのものを象徴するような重みを持つ言葉であり、人や功績を最大級に称える際に用いられる、格式高いニュアンスを持ちます。
- 九鼎(きゅうてい):古代中国で王権の象徴とされた、九つの大きな鼎。
- 大呂(たいりょ):周王朝の宗廟にあった、最も重要な大鐘。
語源・由来
「九鼎大呂」は、中国の歴史書『史記』の平原君虞卿列伝に由来する言葉です。
戦国時代、趙の平原君は、秦の攻撃を防ぐため楚と同盟を結ぼうと、同行する食客を二十人選ぼうとしましたが、十九人しか見つからず、一人足りませんでした。
そこで、それまで目立たなかった食客の毛遂が自ら名乗り出て一行に加わりました(この故事は「毛遂自薦」という別の四字熟語の由来にもなっています)。
楚での交渉は朝から昼になっても決まらず、ほかの食客たちに促された毛遂が剣に手をかけて階段を上り、楚の王に対して堂々と同盟の利を説きました。
毛遂の弁舌によって同盟は成立し、趙へ帰った平原君は「毛先生は一度楚に赴いただけで、趙を九鼎大呂よりも重い存在にした」(毛先生一至楚、而使趙重於九鼎大呂)と、その働きを称えたと伝えられています。
この一言から、「九鼎大呂」は極めて価値の高いもの、重みのある存在のたとえとして使われるようになりました。
使い方・例文
「九鼎大呂」は、人の言葉や功績、地位などの重みを最大級に称える際に使われます。
- 彼の一言は、まさに九鼎大呂の重みを持っていた。
- その提言は、会議の場で九鼎大呂の如く扱われた。
- 長年の功績により、彼の名は九鼎大呂にも例えられる。
類義語・関連語
「九鼎大呂」と同様に、物事の重み・価値の大きさを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 一言九鼎(いちごんきゅうてい):
一言の値打ちが九鼎に等しいほど重いこと。発言の影響力や信頼性が非常に大きいことのたとえ。
両者はともに「九鼎」という王権の象徴を用いて物事の重みを表しますが、混同しやすい「一言九鼎」とは焦点にニュアンスの違いがあります。
「九鼎大呂」と「一言九鼎」の違い
| 語句 | 焦点 | 使われ方 |
|---|---|---|
| 九鼎大呂 (きゅうていたいりょ) | 物事・地位・名声全般 | 功績や地位の重みを称える |
| 一言九鼎 (いちごんきゅうてい) | 発言・言葉 | 一言の影響力の大きさを称える |
対義語
「九鼎大呂」とは対照的に、物事の軽さ・些末さを表す言葉には、以下のようなものがあります。
英語表現
worth its weight in gold
金と同じ重さほどの価値がある、つまり非常に貴重であること
Her advice was worth its weight in gold.
(彼女の助言はまさに九鼎大呂だった。)
carry great weight
発言や存在が大きな影響力や重みを持つこと
His words carry great weight in the industry.
(彼の言葉は業界で九鼎大呂の重みを持つ。)
毛遂が趙を「九鼎大呂より重く」した瞬間
九鼎大呂の出典は『史記』平原君列伝です。
趙の公子平原君に従って楚へ交渉に赴いた毛遂が、楚王を説き伏せて同盟を成立させた働きを、同行者の平原君が「毛先生一至楚、而使趙重於九鼎大呂」(毛先生がひとたび楚に至るや、趙を九鼎大呂よりも重くした)と評したことに由来します。
九鼎は、夏王朝の禹が九つの州から集めた青銅で鋳造したと伝わる九つの鼎で、王権の正統性を象徴する宝物とされました。
大呂は周の王室の宗廟に置かれた大鐘の名です。
どちらも国家の重みを示す最高格の宝物として並び称されてきました。
毛遂のわずかな弁舌によって趙という国の価値がこれらの宝物以上に高まったという平原君の評価から、九鼎大呂は非常に貴重なもの、この上なく重い存在をたとえる言葉として使われるようになりました。










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