羊をどれだけ多く駆り集めて差し向けたところで、一頭の猛々しい虎にはとうていかなわない。
そんな、力の差を顧みない無謀な企てを表すのが、「群羊を駆って猛虎を攻む」(ぐんようをかってもうこをせむ)です。
意味
群羊を駆って猛虎を攻むとは、弱い者をどれだけ多く集めて立ち向かわせても、圧倒的に強い相手にはとうていかなわないことという意味です。
数の力に頼っても埋められないほどの実力差を顧みない、無謀な企てを戒める言葉として使われます。
- 駆って(かって):追い立てて、勢いよく進ませて。
- 猛虎(もうこ):たけだけしく強い虎。
語源・由来
「群羊を駆って猛虎を攻む」は、中国の『史記』張儀列伝に見える言葉に由来します。
秦との同盟(連衡)を説いて回った策士・張儀は、楚の王を説得する際、他国どうしが同盟して秦に対抗しようとする合従策を「それ従を為す者は、群羊を駆りて猛虎を攻むるに異なる無し。虎の羊と格せざること明らかなり」(合従を行うのは、群羊を駆り立てて猛虎に立ち向かわせるのと変わらない。虎と羊とでは、はなから勝負にならないのは明らかだ)と評しました。
羊がどれほど多く群れをなしても、虎という圧倒的な強者の前では無力であるというこの比喩から、力の差を無視した無謀な企てを戒める言葉として使われるようになりました。
使い方・例文
「群羊を駆って猛虎を攻む」は、力の差を顧みない無謀な試みを戒める場面で使われます。
- 資金力で圧倒的に劣る新興企業が業界最大手に真っ向勝負を挑むのは、群羊を駆って猛虎を攻むようなものだ。
- 素人の寄せ集めでプロの猛者に挑むなど、群羊を駆って猛虎を攻む無謀な試みだと周囲は止めた。
- 準備も戦力も不足したまま強豪に挑んだ結果は、まさに群羊を駆って猛虎を攻むだった。
英語表現
「群羊を駆って猛虎を攻む」を英語で表現する場合、圧倒的に不利な戦いを表す言い回しが使えます。
like bringing a knife to a gunfight
- 意味:「銃撃戦にナイフを持っていくようなもの」
- 解説:装備や実力の差を顧みず、圧倒的に不利な条件で挑む無謀さを表す言い回しで、「群羊を駆って猛虎を攻む」に近いニュアンスです。
- 例文:
Challenging the market leader with such a tiny budget is like bringing a knife to a gunfight.
(そんなわずかな予算で最大手に挑むのは、群羊を駆って猛虎を攻むようなものだ。)
「合従」を切り崩そうとした策士・張儀の論法
「群羊を駆って猛虎を攻む」という言葉が生まれた戦国時代の中国では、強大化する秦に対し他の六国が結束して対抗しようとする「合従」策と、逆に各国が個別に秦と結んで生き残ろうとする「連衡」策との駆け引きが繰り広げられていました。
この言葉を語った張儀は、まさに連衡策を説いて回った策士であり、合従に加わろうとする楚王に対して、弱国がどれだけ束になっても独り勝ちする秦には到底かなわないと説いたのです。
つまりこの言葉は、弱者連合の力を鼓舞するためではなく、むしろその限界を突きつけて相手を翻意させるために生まれた、したたかな説得の言葉だったといえます。









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