訃報を伝える際、「死んだ」と直接言うのを避けたい場面があります。
そんなとき、故人への敬意を込めて穏やかに死を表すのが、
「鬼籍に入る」(きせきにいる)です。
意味
鬼籍に入るとは、死んで、死者の名を記す帳簿に名前が加わることという意味です。
婉曲的で改まった言い方のため、目上の人やビジネスの場で人の死を伝える際によく使われます。
- 鬼籍(きせき):死者の名や没年月日を記す帳簿。
- 入る(いる):仲間入りする、加わること。
語源・由来
「鬼」は日本語では妖怪を指すことが多いですが、もともと中国の漢語では死者の霊魂や死者そのものを意味する字です。
「籍」は名前や身分を書きつける帳簿のことで、閻魔大王が死者を管理するために持つとされる帳簿にたとえられています。
この中国由来の漢語表現が日本に伝わり、寺院に保管される過去帳(檀家の死者の戒名や没年月日を記録する帳簿)と結びつく形で、
「亡くなること」を意味する言い回しとして広まったと考えられています。
使い方・例文
「鬼籍に入る」は、訃報の連絡や文章で、故人への敬意を込めて使われます。
- 恩師が鬼籍に入ったと聞き、教え子たちは深く悲しんだ。
- 創業者はすでに鬼籍に入っており、今は二代目が会社を継いでいる。
- あの名優も鬼籍に入って十年が経つ。
類義語・関連語
「鬼籍に入る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 幽明境を異にする(ゆうめいさかいをことにする):
死んであの世とこの世に分かれること。 - 泉下の客となる(せんかのきゃくとなる):
あの世の住人になること。
英語表現
「鬼籍に入る」を英語で表現する場合、以下の言い回しが近いニュアンスを持ちます。
pass away
「亡くなる」という婉曲的な英語表現です。
- 例文:
The founder passed away two decades ago.
創業者は二十年前に鬼籍に入った。
デジタル時代の「鬼籍」──過去帳と家系図の今
「鬼籍」のもとになった寺院の過去帳は、長らく紙の帳面で管理されてきましたが、近年はデータベース化やデジタルアーカイブ化が進んでいます。
檀家制度の希薄化や後継者不足により、紙の過去帳を維持できない寺院も増える中、クラウド上で先祖の記録を保存するサービスも登場しました。
「鬼籍に入る」という言葉が生まれた時代とは記録の形こそ変わりましたが、故人の名を残し、後世に伝えたいという気持ちそのものは、今も昔も変わっていません。









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