故事成語

中原に鹿を逐う

(ちゅうげんにしかをおう)

有力者たちが天下の覇権をめぐって激しく争うこと。


11文字の言葉 / 「ち・ぢ」から始まる言葉
中原に鹿を逐う ことば
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意味

「中原に鹿を逐う(ちゅうげんにしかをおう)」とは、名だたる実力者たちが、天下という最高の座をめぐって激しく争うという意味です。
政治の世界に限らず、業界トップの座やシェアをめぐる企業間の争いなど、スケールの大きな競争を語る際に使われ、複数の実力者が並び立って一つの座を狙う緊迫感のある構図を思わせる言葉です。

  • 中原(ちゅうげん):黄河中流域一帯、転じて天下の中心。
  • 鹿(しか):帝位や政権の象徴。
  • 逐う(おう):追いかける。

語源・由来

この言葉は、中国の歴史書『史記』の「淮陰侯列伝」に記された、蒯通かいつうという弁士の発言に由来します。
蒯通かいつうは、かつて名将・韓信に対し、劉邦から独立して天下を三分する道を進言していた人物でした。

韓信の死後、その進言の存在が明るみに出て、蒯通かいつうは謀反への加担を疑われ、劉邦の前に引き出されます。
処罰されそうになった蒯通かいつうは、こう弁明しました。

「秦、その鹿を失い、天下共にこれを逐う。ここにおいて高材疾足の者、まずこれを得たり」
(秦が帝位という鹿を失い、天下の人々が皆でそれを追いかけました。その中で、才知と足の速さに優れた者が、真っ先にこれを手に入れただけのことです)

蒯通かいつうは、「当時の自分はただ韓信という主人に仕えていたにすぎず、犬が飼い主のために吠えるのと同じだ」とも述べ、混乱の時代には誰もが己の立場で動くのが当然だと説きました。
この弁舌に感心した劉邦は、蒯通かいつうの罪を許したと伝えられています。

使い方・例文

「中原に鹿を逐う」は、複数の実力者が頂点の座を争う、スケールの大きな競争の場面で使われます。

  • 大手各社が新市場に一斉参入し、まさに中原に鹿を逐う様相を呈している。
  • 創業者の後継の座をめぐり、一族は中原に鹿を逐う争いを繰り広げた。
  • 党首選は候補者が乱立し、中原に鹿を逐う混戦模様となった。

英語表現

throw one’s hat into the ring

「競争に名乗りを上げる」という意味の表現で、もとはボクシングの挑戦の合図に由来し、地位や座をめぐる争いに参加する意思を示す表現です。

Several executives threw their hats into the ring for the CEO position.
(複数の幹部が社長の座をめぐり、中原に鹿を逐う争いに名乗りを上げた。)

秦が失った「鹿」を、天下の実力者たちが追いかけた

中原に鹿を逐うは、帝王の位や天下の実権を得ようとして、複数の実力者が互いに争うことのたとえで、「中原」は黄河流域の平原地帯、「鹿」は帝位を象徴しています。

出典は『史記』淮陰侯列伝で、韓信の死後、弁士の蒯通かいつうが劉邦の前で弁明した「秦其の鹿を失い、天下共に之を逐う」という言葉に由来します。
秦という王朝が崩れて帝位という鹿を手放したことで、各地の実力者たちが一斉にそれを奪い合った、という政治情勢を狩りの光景になぞらえたものです。

古代中国の狩猟では鹿は特に価値のある獲物とされ、大勢が入り乱れて一頭を追う光景が、複数の勢力が一つの地位を奪い合う構図と重なったために、この比喩が定着したと考えられています。

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