意味
「絵空事」とは、大げさで、現実にはあり得ない話を指します。
もとは絵と実物との食い違いを指す言葉で、そこから誇張された作り話全般に広がりました。
相手の計画を退けるときに使われることが多く、口にすれば冷ややかな評価になります。
- 絵(え):描かれたもの。実物ではないもの。
- 空事(そらごと):事実ではない話。
語源・由来
「絵空事」は、絵師が自分の描き方を弁護した言葉から生まれました。
鎌倉時代の説話集『古今著聞集』には、「ありのままの寸法にかきて候はば、見所なき物に候故に、絵そらこととは申す」という一節があります。
実物どおりの寸法で描いてしまえば見どころのないものになる、だから絵はそらごとと言うのです、という意味です。
誇張は絵の欠陥ではなく、絵を絵として成り立たせる約束事だ、という主張でした。
つまり「絵空事」は、もともと絵の技法を説明する言葉です。
それが室町時代になると、絵から離れて大げさな作り話一般を指すようになりました。
『中華若木詩抄』には「画そらごと」という形も見えます。
弁護の言葉が、いつのまにか話を退ける言葉に変わっています。
使い方・例文
「絵空事」は、実現の見込みがない計画や、誇張された話を退ける場面で使われます。
- 予算の裏付けがなければ、この再建案は絵空事にすぎない。
- 大臣の公約は絵空事だと、現場の職員はみな知っている。
- 子どもの夢を絵空事と切り捨てるのは、少し早すぎる。
使うときの注意点
「絵空事」は、相手の話をまとめて退ける強い言葉です。
目の前の相手の計画に向けて使えば、検討の余地がないという意思表示になります。
いっぽう「絵空事かもしれませんが」と自分の話に添えると、あらかじめ断りを入れる謙遜の言い方になります。
同じ語でも、誰の話に向けるかで働きが変わります。
類義語・関連語
「絵空事」と同じく、現実味のない話であることを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中だけで組み立てた、実行できない考え。 - 荒唐無稽(こうとうむけい):
よりどころがなく、でたらめで筋の通らない話。 - 絵に描いた餅(えにかいたもち):
役に立たず、何の値打ちもないもの。
「絵空事」と「机上の空論」の違い
どちらも現実には通らない話を指しますが、どこを問題にしているかが違います。
「絵空事」は話の中身が大げさで事実に反する点を、「机上の空論」は理屈は通っていても実行できない点を突きます。
| 語句 | 問題にしている点 | 話の筋道 |
|---|---|---|
| 絵空事 (えそらごと) | 中身が事実に反する | 通っていないこともある |
| 机上の空論 (きじょうのくうろん) | 実行できない | 理屈は通っている |
英語表現
pipe dream
実現の見込みがない空想上の計画を指す、日常でよく使う言い方。
Without funding, the plan is just a pipe dream.
(資金がなければ、その計画はただの絵空事です。)
castle in the air
空中に建てた城、という意味で、土台のない構想をたとえる表現。
He is building castles in the air again.
(彼はまた絵空事を並べています。)
絵の誇張はどこまで許されたか
寸法どおりに描かないという考え方は、日本の絵巻にもはっきり表れています。
身分の高い人物を周りより大きく描いたり、建物の屋根と天井を取り払って室内を上から見せたりする手法です。
後者は吹抜屋台と呼ばれ、『源氏物語絵巻』などに見られます。
寸法の正しさより、見せたいものが伝わる形を選ぶ描き方で、「絵空事」がもともと指していた誇張もこの流れに重なります。









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