意味
「固唾を呑む」とは、先の読めない成り行きを、息を殺して見守ることという意味です。勝負の行方や結果の発表など、次に何が起きるか分からない場面で使われ、口の中にたまったつばを思わず飲み込むほど緊張している様子を表します。
- 固唾(かたず):緊張して息を凝らしているときに口中にたまるつば。
- 呑む(のむ):かまずに飲み込むこと。
語源・由来
「固唾を呑む」は、はりつめた場面で口にたまったつばを、思わずごくりと飲み込む動作を、そのまま言葉にしたものです。
文献に現れる古い例は、鎌倉時代の説話集『沙石集』(1283年)で、「光寂房かたつを呑て、云やりたる事なし」、つまり「光寂房は固唾を呑んで、言い返す言葉もなかった」という一節があります。
ここでは「固唾」が「かたつ」と書かれており、古くはこの読みも使われていました。
使い方・例文
「固唾を呑む」は、結果が決まる直前の張りつめた場面で使われます。
- 延長戦のPK戦を、満員の観客が固唾を呑んで見守った。
- 判決が読み上げられる間、傍聴席はずっと固唾を呑んでいた。
- 合格発表の掲示を前に、固唾を呑む受験生が並んでいる。
表記は「かたず」が本則
「固唾」は「かたづ」と読み書きされることがありますが、辞書の見出しは「かたず」です。
内閣告示の「現代仮名遣い」でも、二語に分解しにくい語の例として「かたず(固唾)」が挙げられ、「ず」で書くことが本則とされています。
また「呑」は常用漢字表に入っていない字のため、「固唾をのむ」と書かれることもよくあります。
類義語・関連語
「固唾を呑む」と同じく、緊張して息をつめる様子を表す言葉には以下のようなものがあります。
「固唾を呑む」と類義語の違い
三つとも、張りつめた場面で体が反応する様子を表すため、同じように見えます。
分かれ目は、その反応が一瞬のものか、結果が出るまで続くものかという点です。
| 語句 | きっかけ | 続く長さ |
|---|---|---|
| 固唾を呑む (かたずをのむ) | 先が読めない成り行き | 結果が出るまで |
| 息をのむ (いきをのむ) | 驚きや感動 | 一瞬 |
| 手に汗握る (てにあせにぎる) | はらはらする展開 | 見ている間じゅう |
英語表現
with bated breath
batedは抑えたという意味で、息を殺して結果を待つ様子を表す表現。
The fans waited with bated breath for the final whistle.
(ファンは固唾を呑んで試合終了の笛を待った。)
hold one’s breath
文字どおり息を止めるという意味から、結果が出るまで緊張して待つ様子を表す言い回し。
We held our breath as the envelope was opened.
(封筒が開けられる間、私たちは固唾を呑んでいた。)
体の動きが、そのまま気持ちの名前になる
「固唾を呑む」は、緊張という気持ちを直接名指しせず、そのときに起きる体の動きだけを言い表しています。
同じ作りの言い方は日本語に数多くあり、落胆を「肩を落とす」、感心を「膝を打つ」、驚きを「息をのむ」と言い換えています。
『沙石集』の光寂房も、驚いたとも困ったとも書かれず、つばを飲み込んで黙っている姿だけが記されています。
読み手は、その動作のほうから気持ちを読み取ります。









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