意味
「盲蛇に怖じず」は、無鉄砲な人をやや突き放して評する場面にも、自分自身の向こう見ずだった行動を振り返って謙遜する場面にも使われることわざで、危険を知らないからこそ、かえって恐れず大胆に行動してしまうことを表します。裏を返せば、物事をよく知っている人ほど用心深くなるという逆説も含んだ言い回しです。
語源・由来
「盲蛇に怖じず」は、目の見えない人がヘビの恐ろしい姿を見たことがないために、ヘビを前にしても取り立てて怖がらない、という状況を借りたたとえです。
実際に目の見えない人がヘビを恐れないと確かめられているわけではなく、「危険な姿を知らなければ、恐れも生まれない」という因果関係を分かりやすく示すための比喩表現です。
同じことわざは「盲蛇におじず」とひらがなで書かれることもあります。
意味の近い言葉に「知らぬが仏」がありますが、こちらは知らないことで心が穏やかでいられる状態を指すのに対し、「盲蛇に怖じず」は知らないことがそのまま向こう見ずな行動につながる点に重きを置いています。
使い方・例文
「盲蛇に怖じず」は、経験や知識の乏しさゆえに大胆な行動に出る人の様子を評したり、当人が後になって自分の無謀さを振り返ったりする場面で使われます。
- 右も左も分からない新人が社長にいきなり直談判したのは、盲蛇に怖じずというものだ。
- 後から思えば無謀な計画だったが、当時は盲蛇に怖じずで突き進めた。
類義語・関連語
「盲蛇に怖じず」と同じように、知識や経験の乏しさから大胆な行動に出ることを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 怖いもの知らず(こわいものしらず):
危険や恐怖の対象を意識せず、平然と振る舞う様子。 - 命知らず(いのちしらず):
自分の身の危険を顧みず、無茶な行動に出る様子。
対義語
「盲蛇に怖じず」と正面から対立する、危険を知っているからこそ用心深く振る舞うことを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
徳のある人物は、はじめから危険なことに近づかないという教え。
使用上の注意
「盲」の字を含むこの言い回しは、視覚障がいへの配慮から、現代のビジネスや公の場では避けられる傾向にあります。同じ内容を表す際は「怖いもの知らず」「向こう見ず」といった言い換え表現が使われます。
1638年の俳諧集にすでにあったことわざ
「盲蛇に怖じず」が確認できる古い文献に、江戸時代初期の俳諧書『毛吹草』(1638年)があります。
江戸時代の早い段階から、知識のなさが恐れ知らずの行動につながるという発想が、ことわざの形で使われていたことが分かります。
なお「盲」という語を含むこの言葉は、差別的な表現として現在では使用が避けられる傾向にあります。
ことわざとしての成立は古くても、実際に使う場面は限られてきているという点も、あわせて押さえておきたい事実です。









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