意味
「肩が凝る」は、もともと肩まわりの筋肉が張って動かしにくくなる体の状態を指す言葉です。
そこから意味が広がり、気を遣う相手や堅苦しい場に居続けて心まで疲れてしまう様子を表す場合にも使われます。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎなど、ごく身近な場面で気軽に口にされます。
語源・由来
「肩が凝る」は、「凝る」という動詞が本来持つ「液体などが固まる」「筋肉が張って硬くなる」という意味から生まれた言い方です。
肩の筋肉に疲労や緊張が続くと血の巡りが悪くなり、こわばって石のように硬くなる感覚を、「凝る」という一語で言い表しています。
この体の感覚が、精神的な負担や気疲れにもそのまま重ねられ、心理的な意味でも使われるようになったとみられます。
「凝る」には、一つのことに夢中になって手間をかける「凝り性」のような使い方もあり、根っこには「一点に意識や力が集中して固まる」という共通のイメージがあります。
使い方・例文
「肩が凝る」は、体の疲れを訴える場面のほか、堅苦しい相手や気の抜けない状況について話す場面でも使われます。
- 一日中パソコン画面を見ていたら、すっかり肩が凝った。
- あの上司と二人きりで会食するのは、正直肩が凝る。
類義語・関連語
「肩が凝る」と同じように、体や心にかかる疲れ・緊張を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 肩が張る(かたがはる):
肩の筋肉が突っ張るように感じること。 - 気が張る(きがはる):
緊張して気持ちがゆるまないこと。
「肩が凝る」と「肩が張る」の違い
どちらも肩の不快感を表しますが、筋肉の状態が異なります。
「肩が凝る」は筋肉が縮こまって硬くなった状態を指すのに対し、「肩が張る」は筋肉が伸びたまま硬くなり、突っ張るような感覚を指します。
| 語句 | 筋肉の状態 | 感じ方 |
|---|---|---|
| 肩が凝る (かたがこる) | 縮こまって硬くなる | 重だるい鈍い不快感 |
| 肩が張る (かたがはる) | 伸びたまま硬くなる | 突っ張るような違和感 |
英語表現
have stiff shoulders
直訳は「こわばった肩を持つ」。肩の筋肉がこったり張ったりしている体の状態をそのまま表す表現。
I have stiff shoulders from sitting all day.
(一日中座っていたせいで肩が凝っている。)
walking on eggshells
直訳は「卵の殻の上を歩く」。相手を怒らせないよう、常に気を張って慎重にふるまう心理的な緊張を表す表現。
Around him I always feel like I’m walking on eggshells.
(彼の前ではいつも肩が凝るような気の遣いようだ。)
『門』より前からあった「痃癖」という病名
「肩が凝る」という表現は、夏目漱石が小説『門』(1910年)で使ったことから広まったという話が知られています。
『門』には「頸と肩の継目の少し背中へ寄った局が、石のように凝っていた」という一節があり、これが有名な用例のひとつとして紹介されています。
ただし、肩のこわばりという感覚そのものは、漱石の時代よりずっと前から日本語の中に存在していました。
江戸時代の医学書『病名彙解』(1686年)には、肩や首のこわばりを指す「痃癖」という病名がすでに記載されており、俗には「うちかた」(打った肩の意)とも呼ばれていたとされています。
「肩が凝る」という言い回し自体の初出をひとつの作品に絞り込むことは難しいものの、症状としての「肩のこり」は江戸時代の医学用語から現在の日常語まで、形を変えながら長く日本語の中に存在し続けてきたことになります。









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