意味
「遠慮なければ近憂あり」とは、先々のことまで見通した深い考えを持たずにいると、遠からず身近なところで困った事態が起こるという意味です。
目先のことだけにとらわれず、長い目で物事を考える大切さを説く場面で使われます。
- 遠慮(えんりょ):
先々まで見通した深い考え。 - 近憂(きんゆう):
身近に起こる心配事。
語源・由来
「遠慮なければ近憂あり」は、中国の思想家である孔子の言葉をまとめた『論語』衛霊公篇に登場します。
「人、遠慮無ければ、必ず近憂有り(人として先々を見通す深い考えを持たなければ、必ず身近なところに心配事が起こる)」という一節があり、目先の利害だけにとらわれず、長期的な視野を持つことの大切さを説いた孔子の教えとして伝わっています。
政治や国の運営について語られた言葉ですが、個人の生き方や仕事の進め方にもそのまま当てはまる内容です。
使い方・例文
「遠慮なければ近憂あり」は、目先の都合を優先して将来への備えを怠る人や組織を戒める場面で使われます。
- 設備投資を先延ばしにしてきたつけが回ってきた。まさに遠慮なければ近憂ありだ。
- 遠慮なければ近憂ありというように、老後の資金は早いうちから考えておきたい。
「遠慮」の意味の取り違えに注意
「遠慮」は現代では「相手に気を遣って控えめにする」という意味で使うのが普通ですが、このことわざの「遠慮」はまったく別の意味です。
ここでの「遠慮」は「遠くまで見通した深い考え」を指し、「気兼ねして控える」という今の使い方とは関係がありません。
「遠慮せずに振る舞うと近いうちに困ったことが起こる」という意味だと取り違えられることがありますが、本来は「将来を見通す考えがないと」という意味です。
類義語・関連語
「遠慮なければ近憂あり」と同じく、将来を見据えることの大切さを説く言葉には、次のようなものがあります。
「遠慮なければ近憂あり」と類義語の違い
「備えあれば憂いなし」や「転ばぬ先の杖」が具体的な準備の大切さを説くのに対し、「遠慮なければ近憂あり」は将来を見通す考え方そのものの有無に焦点を当てる違いがあります。
| 語句 | 焦点 |
|---|---|
| 遠慮なければ近憂あり (えんりょなければきんゆうあり) | 見通す考え方の有無 |
| 備えあれば憂いなし (そなえあればうれいなし) | 準備をしておくこと |
| 転ばぬ先の杖 (ころばぬさきのつえ) | 事前の対策そのもの |
冬支度を怠ったキリギリス
古代ギリシャの寓話にも、これと同じ教えを説く話があります。
夏の間せっせと食料を蓄えていたアリに対し、キリギリスは歌って踊って毎日を楽しく過ごしていました。
冬が訪れると、蓄えのないキリギリスは飢えに苦しみ、アリに助けを求めることになります。
遠く離れた時代と地域で生まれたにもかかわらず、先を見通さない者には近いうちに苦難が訪れるという同じ教訓に、人々はそれぞれ独自にたどり着いていました。










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