物事を実行に移す「行動力」とは対照的に、ためらってしまう、先延ばしにしてしまう、あるいは口だけで実行しないといった「行動力のなさ」を表す言葉も、日本語には多く存在します。
今回は、「行動力がない」というテーマに関連する、主なことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語などを紹介します。
「行動力がない」に関連する言葉 一覧
ことわざ
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
丈夫な石の橋でも、叩いて安全か確かめてから渡ること。用心深いこと。転じて、慎重すぎてなかなか実行に移せないことのたとえ。 - 言うは易く行うは難し(いうはやすくおこなうはかたし):
口で言うのは簡単だが、それを実行するのは難しいということ。 - 絵に描いた餅(えにかいたもち):
餅の絵は、見えても食べられないことから。計画や理論が立派でも、実行が伴わない、役に立たないことのたとえ。 - 明日ありと思う心の仇桜(あすありとおもうこころのあだざくら):
(和歌に由来)明日もまだ桜は咲いているだろうと油断していると、夜の間に散ってしまう。やるべきことを先延ばしにすることへの戒め。
慣用句
- 及び腰になる(およびごしになる):
自信なさげに中途半端な姿勢をとるさま。積極的に行動しようとしないこと。 - 口先ばかり(くちさきばかり):
言うだけで、実行が伴わないさま。 - 尻が重い(しりがおもい):
なかなか行動を起こそうとしないさま。 - 能書きは立派(のうがきはりっぱ):
(「能書き」は薬の効能を書き記したもの)口では優れたことを言うが、実際の中身や行動が伴わないこと。 - 高みの見物(たかみのけんぶつ):
自分は安全な場所から、他人の様子を傍観していること。行動を起こさないさま。 - 手をこまねく(てをこまねく):
(「手をこまぬく」とも)腕組みをすること。転じて、何もしないで傍観しているさま。 - 二の足を踏む(にのあしをふむ):
一歩目は出ても、ためらって二歩目が出せないこと。実行をためらうさま。 - のらりくらり:
態度をはっきりさせず、行動を起こさないさま。 - 腰が重い(こしがおもい):
物事を始めるまでに時間がかかるさま。 - 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中だけで考えた、実際には役に立たない理論や計画のこと。
四字熟語
- 優柔不断(ゆうじゅうふだん):
ぐずぐずして、物事をなかなか決断できないこと。 - 有口無行(ゆうこうむこう):
口では立派なことを言うが、実際の行動が伴わないこと。 - 言行不一致(げんこうふいっち):
言うことと行動が一致しないこと。 - 好逸悪労(こういつあくろう):
楽をすることを好み、働く(苦労する)ことを嫌うこと。 - 拱手傍観(きょうしゅぼうかん):
何もしないで、ただ腕を組んでそばで見ていること。「手をこまねく」と類義。 - 袖手傍観(しゅうしゅぼうかん):
(「拱手傍観」の類義語)腕を袖に入れたまま、そばで見ていること。傍観するさま。 - 空理空論(くうりくうろん):
内容がなく、実際とかけ離れた役に立たない理論や議論。 - 遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん):
疑い迷って、ぐずぐずためらうこと。決断・実行できないさま。 - 無為徒食(むいとしょく):
何も仕事をせず、ただ遊び暮らすこと。 - 舌先三寸(したさきさんずん):
口先だけの巧みな言葉。行動や実意が伴わないこと。
故事成語
- 杞憂(きゆう):
昔、杞の国の人が「天が落ちてきたらどうしよう」と心配した故事から。まったく必要のない心配をすること。取り越し苦労。(中国の『列子』より) - 画餅に帰す(がへいにきす):
「絵に描いた餅」と同じ意味。計画が実行されず、無駄に終わること。(「画餅」の故事から) - 髀肉の嘆(ひにくのたん):
英雄(劉備)が、活躍の場がなく行動できないうちに、太ももに肉がついてしまったのを嘆いた故事から。実力を発揮する機会がないことへの嘆き。(中国の『三国志』より) - 百年の河清を俟つ(ひゃくねんのかせいをまつ):
黄河が澄むのを待つように、実現不可能なことをあてにして、ただ待ち続けること。行動しないことのたとえ。(中国の『春秋左氏伝』より)
まとめ – 行動を戒める言葉たち
「行動力がない」状態を表す様々な言葉を紹介しました。
「優柔不断」や「遅疑逡巡」のような「ためらい」、「有口無行」「言行不一致」のような「口先だけ」、そして「明日ありと」のような「先延ばし」など、行動に移せない多様な姿が表現されています。
これらの言葉は、多くの場合、行動をためらうことへの戒めや、実行の重要性を示す教訓として使われてきました。
自分の行動を振り返る際の、一つのヒントになるかもしれませんね。




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