まだ起きてもいない未来の出来事を想像し、無用な不安や心配を重ねる状態を「取り越し苦労」と呼びます。
人間は古くからこうした心理と向き合い、数多くの言葉を残してきました。
過剰な心配や警戒心を表す言葉から、心配事を手放すための先人の知恵まで、一覧にまとめました。
無用な心配・しなくていい苦労
- 杞憂(きゆう):
まったく心配する必要のないことを、あれこれと無駄に心配すること。 - 気を揉む(きをもむ):
まだ起きない結果を心配してあれこれと考え、心が落ち着かない状態。 - 杯中の蛇影(はいちゅうのだえい):
疑い深いあまり、事実ではないことを気にして無駄に苦しむこと。 - 独り相撲(ひとりずもう):
周囲は気にしていないのに、一人で勝手に焦って気負い空回りすること。
疑心が生み出す幻・過敏な反応
- 疑心暗鬼(ぎしんあんき):
疑いの心があると、何でもないことまで恐ろしく感じてしまう心理。 - 戦々恐々(せんせんきょうきょう):
ある事態の悪化を恐れて、極度に萎縮しびくびくしている状態。 - 幽霊の正体見たり枯れ尾花(ゆうれいのしょうたいみたりかれおばな):
恐怖の対象も、冷静に実体を確かめれば案外なんでもないということ。 - 風声鶴唳(ふうせいかくれい):
精神的に追い詰められ、わずかな物音などにも過敏に反応して恐れること。 - 草木皆兵(そうもくかいへい):
草木すら敵兵に見えるほど、極度に恐れてパニックに陥っている心理。 - 落ち武者は薄の穂にも怖ず(おちむしゃはすすきのほにもおず):
何かに怯えたり後ろめたいことがある者は、何でもないものも恐れること。
トラウマ・慎重すぎる姿勢
- 羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく):
前の失敗に懲りて必要以上に用心深くなり、無駄な心配を重ねること。 - 呉牛喘月(ごぎゅうぜんげつ):
過去のトラウマから過剰に怯え、全く無害なものまで恐れてしまうこと。 - 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
必要以上に用心深く物事を進めることのたとえ。行き過ぎた心配の比喩。
取り越し苦労を手放す教訓
- 案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし):
事前にあれこれ心配するよりも、実際にやってみると案外たやすくできること。 - 明日は明日の風が吹く(あしたはあしたのかぜがふく):
先のことをくよくよ悩まず、成り行きに任せて楽観的に生きようという姿勢。 - 来年の事を言えば鬼が笑う(らいねんのことをいえばおにがわらう):
予測不可能な未来をあれこれ悩んでも無駄であるという、開き直りの教訓。 - 人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ):
全力を尽くした後は、結果を思い悩まず天の意志に任せるという考え方。 - 果報は寝て待て(かほうはねてまて):
幸運は人の力でどうにもならないため、無駄に焦らず時期が来るのを待つこと。
心配事の大半は現実にならない、という研究結果
不安を感じやすい人が「心配した出来事」が実際に起きるかどうかを追跡した研究があります。
ペンシルバニア州立大学のBorkovecらの研究では、心配事として記録した出来事のうち約79%は実際には起きなかったとされています。
さらに実際に起きた出来事のうち一定割合は、事前の想定より深刻ではなかったと報告されています。
脳は防衛本能として、まだ起きていない危機に対しても警戒信号を発します。
しかしその警告の多くは、実際には起こらない出来事に向けられています。
ことわざの「幽霊の正体見たり枯れ尾花」は、この心理的な傾向を端的に言い表した表現です。








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