意味
「虎口」とは文字通り「虎の口」のことで、一度入り込めば生きては戻れないほど恐ろしい場所、あるいは「死の淵」の比喩として使われます。
そこから命からがら逃げ出すという、切迫した状況を表しています。
語源・由来
「虎口を逃れる」の由来は、中国の歴史書『史記』の「叔孫通伝」に見える故事にあるとされています。
秦の時代、反乱の知らせを受けた皇帝が学者たちに意見を求めたところ、危険だと正直に答えた学者たちは皇帝の怒りを買って命を落としました。
ただ一人、学者の叔孫通だけは「単なる盗賊に過ぎない」と答えて難を逃れ、後に自らを振り返って「虎の口から逃げ出すような危うい立場にあった」と語ったと伝えられています。
また、単に逃げるだけでなく「虎口を逃れて竜穴に入る(一つの災難を逃れても、また別の災難に遭う)」といった派生表現もあります。
使い方・例文
単に「面倒なことから逃げた」という程度では使わず、人生の進退に関わるような重大な局面や、身体的な危機から脱した際に用いられます。
- 崩落の直前に車を走らせ、虎口を逃れる。
- 先輩の助けにより、取引停止の虎口を逃れた。
- 詐欺の罠に気づき、危ういところで虎口を逃れる。
- 捜索隊に発見され、冬の雪山でようやく虎口を逃れた。
誤用・注意点
「虎口(ここう)」を「こぐち」と読み間違えないよう注意が必要です。
お城の出入り口を指す「虎口(こぐち)」という建築用語もありますが、ことわざとして「危険な場所」を指す場合は「ここう」と読むのが一般的です。
また、「虎口」自体が「きわめて危険な場所」という意味を持つため、単に「危ない場所」と言いたい時に「虎口を逃れる」と使うのは誤りです。
あくまで「そこから逃げ出した」という動作までを含めた表現です。
類義語・関連語
「虎口を逃れる」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 九死に一生を得る(きゅうしにいっしょうをえる):
十のうち九までは死ぬと思われるほどの危難から、かろうじて助かること。 - 危機一髪(ききいっぱつ):
髪の毛一本ほどの差で、きわめて危険な状態に陥りそうな瞬間。 - 死中に活を求める(しちゅうにかつをもとめる):
絶望的な状況の中で、なんとか生き延びる道を必死に探すこと。
対義語
「虎口を逃れる」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 虎口に入る(ここうにいる):
自ら進んで非常に危険な場所や状況に飛び込むこと。 - 飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし):
自ら災いの中に飛び込み、自滅することのたとえ。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」との違い
よく混同される言葉に「虎穴に入らずんば虎子を得ず」がありますが、これは「大きな成功には危険が伴う」という教訓を説く言葉です。
「虎口(ここう)」は単に死に直結する恐ろしい場所を指すのに対し、「虎穴(こけつ)」はリスクはあるがリターン(虎の子)もある場所を指します。
純粋な意味の反対(危険から出る↔危険に入る)を考える場合は、「虎口に入る」が最も適した対義語と言えます。
英語表現
「虎口を逃れる」を英語で表現する場合、以下の定型句が適しています。
a narrow escape
「間一髪の脱出」
生死を分けるような危機から、かろうじて逃げ延びることを指す最も一般的な表現です。
- 例文:
It was a narrow escape from the sinking ship.
沈没船から間一髪で逃げ出すことができた。
escape from the lion’s den
「獅子の穴からの脱出」
英語圏では危険の象徴として「ライオン(獅子)」が用いられることが多く、聖書由来の非常に近いニュアンスを持つイディオムです。
- 例文:
I felt like I managed to escape from the lion’s den after that meeting.
あの会議の後、まるで虎口を逃れたような気分だった。
お城の「虎口」
日本の城郭建築における「虎口(こぐち)」という言葉も、このことわざの意味と深く結びついています。
城の入り口は、敵が侵入しにくいように道が複雑に折り曲げられ、四方から攻撃を浴びせられるように設計されていました。
一度足を踏み入れれば生きては出られないその構造が、まさに「虎の口」のように恐ろしい場所であったため、同じ漢字を当てて呼ばれるようになったのです。









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