普通なら緊張するはずの場面でも、まったく動じずに堂々としている。
そんな図太い度胸を体の一部で表すのが、「心臓に毛が生えている」(しんぞうにけがはえている)です。
意味
「心臓に毛が生えている」とは、ひどく厚かましく、ずうずうしいほど図太いという意味です。
単なる勇気ではなく、普通なら気後れするはずの場面でも動じない、開き直ったような強さを表します。
感心よりも、あきれや皮肉を込めて使われることが多い言葉です。
語源・由来
「心臓に毛が生えている」は、江戸時代に使われていた「肝に毛が生える」という言い回しが元になった表現です。
古くから「肝」は「肝が据わる」というように、度胸や精神力の象徴とされてきました。
毛が生えるほど丈夫で強くなった肝という発想から、図太さやずうずうしさを表す言葉が生まれ、昭和になって西洋の影響で心を象徴する器官が「心臓」に置き換わり、現在の形になったと考えられています。
使い方・例文
「心臓に毛が生えている」は、普通なら気が引けるはずの場面でも動じない図太さを指す場面で使われます。
- あの新人は、心臓に毛が生えているとしか思えない大胆さだ。
- 大勢の前で堂々と話せるとは、心臓に毛が生えている。
- 遅刻しても謝らないなんて、心臓に毛が生えているとしか言えない。
類義語・関連語
「心臓に毛が生えている」と同じように、図太さやずうずうしさを表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 肝が据わる(きもがすわる):
物事に動じず、落ち着いて度胸があること。 - 面の皮が厚い(つらのかわがあつい):
恥知らずなほど、厚かましい態度を取ること。
「心臓に毛が生えている」と「肝が据わる」の違い
どちらも動じない強さを表しますが、評価の向きが異なります。「心臓に毛が生えている」は厚かましさへの皮肉を含む否定的な響きを、「肝が据わる」は落ち着きへの肯定的な評価を表します。
| 語句 | 評価の向き |
|---|---|
| 心臓に毛が生えている | 皮肉を含む否定的な響き |
| 肝が据わる | 落ち着きへの肯定的な評価 |
英語表現
have a lot of nerve
「大変な神経の太さを持つ」という意味で、あきれるほどの図太さや厚かましさを表す口語表現。
He really has a lot of nerve to ask for a raise now.
(今この時期に昇給を求めるとは、心臓に毛が生えている。)
内臓から心臓へ、象徴が移った理由
古代中国由来の身体観では、感情や精神の働きは「肝」をはじめとする内臓に宿るとされてきました。
ところが近代以降、西洋医学の考え方が広まると、感情の源は心臓であるという見方が一般に定着していきます。
「肝に毛が生える」から「心臓に毛が生えている」への変化は、まさにこの東洋と西洋、二つの身体観が入れ替わっていく過程を、慣用句というかたちで今に伝える貴重な例だといえます。









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