意味
「月満つれば則ち虧く」とは、勢いが最も盛んな時こそ、やがて訪れる衰えの始まりでもあるという教えです。
権力や繁栄、人気の絶頂にある人や物事を評して、油断や慢心を戒める場面で使われ、諭すような響きを持ちます。
- 満つれば(みつれば):満月になれば。
- 則ち(すなわち):そうすると、必ず。
- 虧く(かく):欠けていくこと。
語源・由来
「月満つれば則ち虧く」は、中国の歴史書『史記』の蔡沢伝に由来する言葉です。
秦の宰相であった范雎(はんしょ、現代語訳:戦国時代の政治家)に対し、遊説家の蔡沢(さいたく)は引退を勧める際、「日中すれば則ち移り、月満つれば則ち虧く」(現代語訳:太陽は真昼を過ぎれば傾き、月は満ちればやがて欠ける)と説いたと伝えられています。
物事が盛りを極めれば、その後は衰えに向かうのが天地の道理であるという考えを月の満ち欠けにたとえたもので、蔡沢はこの言葉によって、権勢の絶頂にある范雎に身の引き際を説いたとされています。
使い方・例文
「月満つれば則ち虧く」は、絶頂にある人や物事を戒め、慢心を諭す場面で使われます。
- 絶好調の今こそ、月満つれば則ち虧くを心に留めたい。
- 業績のピークに浮かれず、月満つれば則ち虧くと自戒する。
- 人気絶頂の彼にも、月満つれば則ち虧くの時が来るだろう。
類義語・関連語
「月満つれば則ち虧く」と同様に、栄華が永遠には続かないと説く言葉には、以下のようなものがあります。
- 驕る平家は久しからず(おごるへいけはひさしからず):
勢いのある者もいつか衰えるという戒め。 - 盛者必衰(じょうしゃひっすい):
勢い盛んな者もいずれ必ず衰えるという教え。
英語表現
Pride comes before a fall
慢心はやがて失敗を招くという意味の表現。
Stay humble, because pride comes before a fall.
(謙虚でいなさい。驕りはやがて失敗を招くから。)
What goes up must come down
勢いよく上がったものは、必ず下がるという意味の表現。
Enjoy the success, but remember what goes up must come down.
(成功を楽しめばいい、ただし上がったものは必ず下がることを忘れずに。)
自らの助言を、身をもって実践した蔡沢
范雎に引退を説いた蔡沢は、その後、范雎の後任としてみずから秦の宰相の地位に就きました。
ところが就任からわずか数か月で自分を非難する声が上がると、誅殺を恐れた蔡沢は、病と称してみずから宰相の印を返上しています。
蔡沢が范雎を説いたときに引き合いに出したのは、商鞅や呉起といった、功を立てながら最後には殺された功臣たちの例でした。
その范雎も、退くにあたっては病と称して宰相の印綬を返上しています。
その後の蔡沢は昭王・孝文王・荘襄王に仕え、さらに始皇帝の代まで秦にとどまりました。











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