意味
「図に乗る(ずにのる)」とは、物事がうまく運んだのに気をよくして、勢いづいて分をわきまえない行動まで取ってしまうことです。
本人は得意げでも、周囲から見れば行き過ぎに映るという、たしなめの気持ちが込められた言葉です。
- 図(ず):一般には絵や図表など、物事を目に見える形に表したもの。ここでは仏教の声明における音階の転調を指すとされる。
- 乗る(のる):調子や流れにうまく合う。
語源・由来
「図に乗る」は、仏教の儀式で経文に節をつけて唱える「声明」に由来するといわれる言葉です。
声明には音階を転じる難しい技法があり、これを「図」と呼びました。
その転調がうまくいくことを「図に乗る」と言ったという説で、国語学者の金田一春彦もこの説を紹介しています。
使い方・例文
「図に乗る」は、成功や好意に気をよくして、態度や行動が行き過ぎてしまう様子を指摘する場面で使われます。
例文
- 褒められたからといって図に乗るのはよくない。
- 一度成功しただけで図に乗ってしまった。
- 少し値引きしてもらったら図に乗って、さらに注文をつけてきた。
類義語・関連語
「図に乗る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 調子に乗る(ちょうしにのる):
物事がうまく運んで得意になり、軽はずみなふるまいをすること。 - 付け上がる(つけあがる):
相手の甘さにつけこんで、いい気になること。 - 天狗になる(てんぐになる):
自分の能力を過信し、うぬぼれること。
対義語
「図に乗る」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 謙虚(けんきょ):
控えめで、おごらない態度。
英語表現
get carried away
調子に乗る
勢いや興奮のあまり、行き過ぎた行動をしてしまう様子を表す表現です。
Don’t get carried away just because you won once.
(一度勝ったくらいで図に乗るな。)
push one’s luck
調子に乗って限度を越える
うまくいっていることに味を占め、それ以上の要求をしようとする様子を表す表現です。
He’s pushing his luck by asking for another favor.
(また頼み事をするとは図に乗っている。)
西鶴の「図に乗る」は商売繁盛
「図に乗る」は、江戸時代前期の本では「物事が思うように運ぶ」というよい意味でも使われていました。
作家の井原西鶴の『日本永代蔵』(1688年)には、「何事しても頭に乗って、今は金銀うめきて、遣へど跡はへらず」(何をしてもうまく運び、今では金銀がうなるほどあって、使っても減らない)とあります。
「ず」に「頭」の字を当てることも多く、ここでも「頭に乗って」と書かれています。
いっぽう浄瑠璃(人形芝居の語り物)の『平仮名盛衰記』(1739年)では、「山伏も図に乗って、強ふ見せんと拳をにぎりひぢを張」(山伏も調子づいて、強そうに見せようと拳を握り、ひじを張って)と、いい気になって調子づく今の意味で使われています。











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