おいしそうな匂いに誘われて手を伸ばした食べ物と、つい口をついて出た一言。
その両方に潜む危うさを戒めているのが、「病は口より入り、禍は口より出ず」(やまいはくちよりいり、わざわいはくちよりいず)です。
意味
「病は口より入り、禍は口より出ず」とは、病気は不用意な飲食から生まれ、災いは不用意な発言から生まれるという意味です。
体に入れるものと口から出す言葉、その両方を慎むべきだという二重の戒めが込められています。
- 病(やまい):病気。
- 禍(わざわい):災い、不幸な出来事。
- 口(くち):食べ物を入れる口、言葉を発する口の両方を指す。
語源・由来
この言葉は、中国三国時代から西晋にかけて活躍した政治家・文学者である傅玄の著書『傅子』に由来するとされています。
不摂生な飲食が病気の原因になることと、軽率な発言が思わぬ災難を招くことを、対句の形で並べて戒めた言葉です。
中国の民間に伝わる俚諺(りげん、庶民のことわざ)がもとになっているという説もあり、古くから健康と言葉づかいの両方を戒める知恵として親しまれてきました。
使い方・例文
暴飲暴食への注意や、うっかり口を滑らせたことへの反省など、体と言葉の両面を戒めたいときに使われます。
- 「病は口より入り、禍は口より出ず」というから、暴飲暴食は控えよう。
- 余計な一言で友人を怒らせてしまい、病は口より入り、禍は口より出ずを痛感した。
- 祖母の口癖は「病は口より入り、禍は口より出ず」だった。
類義語・関連語
英語表現
Diseases enter through the mouth, and misfortunes come out of it.
意味:病気は口から入り、災いは口から出る。日本語の言葉を直訳した表現です。
- 例文:
Remember, diseases enter through the mouth, and misfortunes come out of it.
病は口より入り禍は口より出ずということを忘れないように。
医食同源思想と『傅子』の位置づけ
「病は口より入り」という発想は、中国古来の「医食同源(いしょくどうげん)」思想、すなわち医薬と日々の食事は根本において同じであるという考え方に通じています。
『傅子』の著者である傅玄は、乱世の三国時代を生きた実務家でもあり、政治や人材登用について現実的な提言を数多く残しました。
体調管理という個人的な問題と、失言という社会的な問題を、口という同じ器官の二つの働きとして並べた発想は、当時の知識人が「慎み」を人格の基礎とみなしていたことをよく示しています。









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