桶いっぱいの小芋を水に入れてかき混ぜると、芋同士が絶え間なくぶつかり合う。
そんな身動きが取れないほどの混雑ぶりを表すのが、「芋の子を洗うよう」(いものこをあらうよう)です。
意味
「芋の子を洗うよう」とは、狭い場所に大勢の人が押し寄せ、身動きが取れないほど混雑している様子という意味です。
海水浴場や祭りの会場など、人があふれてひしめき合う光景を表す際に使われます。
単なる人混みではなく、体が触れ合うほどの窮屈さを強調する、やや誇張を含んだ言い回しです。
- 芋の子(いものこ):里芋の小さな実
- 洗う(あらう):水で汚れを落とすこと
語源・由来
「芋の子を洗うよう」は、里芋の下ごしらえの様子に由来する言葉です。
収穫したばかりの里芋には泥や薄皮がついているため、大きな桶や樽に水を張って入れ、棒でかき回して洗う下ごしらえが古くから行われてきました。
すると桶の中では、隙間なく詰まった小芋同士が絶えずぶつかり合い、転がり合いながら泥を落としていきます。この、身動きの取れないほど芋がせめぎ合う様子が、人であふれかえる会場の光景と重ね合わされ、混雑を形容する言い回しとして定着しました。
使い方・例文
「芋の子を洗うよう」は、人であふれかえった場所の混雑ぶりを表す際に使われます。
- 花火大会の会場は芋の子を洗うような人出だった。
- 夏休みのプールは芋の子を洗うような混雑ぶりだ。
- 初売りの店内は芋の子を洗うような騒ぎとなった。
類義語・関連語
「芋の子を洗うよう」と同じように、激しい混雑を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 立錐の余地もない(りっすいのよちもない):
錐を立てる隙間さえないほど、人や物がぎっしり埋まっている様子。 - すし詰め(すしづめ):
寿司折の中身のように、隙間なく人が詰め込まれている状態。
英語表現
packed like sardines
狭い場所に人がぎっしり詰め込まれ、身動きが取れない状態を表す表現。
The train was packed like sardines during rush hour.
(通勤ラッシュの電車は芋の子を洗うような混雑だった。)
里芋が選ばれた、もうひとつの理由
「芋の子を洗うよう」という言葉で人混みを表すたとえに、大根やじゃがいもではなく里芋が使われているのには理由がある。
里芋は一株の親芋の周りに、子芋や孫芋と呼ばれる小芋が鈴なりに連なって育つ性質を持つ野菜である。掘り起こした直後から、すでに何十個もの芋が身を寄せ合うようにひしめいている。
そのため、桶で洗う工程に入る前の畑での姿からして、すでに「密集」のイメージと結びつきやすい野菜だったといえる。大きな一つの塊として育つ大根や、まばらに実がつく作物では、この言い回しは生まれにくかったと考えられる。









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