故事成語

狡兎死して走狗煮らる

(こうとししてそうくにらる)

敵や目的がなくなれば、それまで功績のあった部下も不要とされ、切り捨てられてしまうこと。


12文字の言葉こ・ご」から始まる言葉
狡兎死して走狗煮らる ことば
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意味

「狡兎死して走狗煮らる」とは、目的がなくなれば、それまで功績のあった者も不要とされ切り捨てられることという意味です。組織や権力者が都合の良いときだけ人を利用し、用が済めば冷酷に切り捨てる状況を批判的に語るときに使われ、使われて捨てられる側の悔しさや組織への不信感がにじむ言葉です。

  • 狡兎(こうと):すばしっこい兎。
  • 走狗(そうく):獲物を追う猟犬、転じて人に使われる手先。
  • 煮らる(にらる):煮て食われる。

語源・由来

この言葉は、中国の歴史書『史記』に記された故事に由来し、もとは楚漢戦争より一時代前、春秋時代の越(えつ)の国の逸話にさかのぼります。
越王・勾践(こうせん)に仕えた軍師・范蠡(はんれい)は、宿敵・呉(ご)を滅ぼした後、共に戦った文種(ぶんしょう)にこう書き送りました。

「飛ぶ鳥尽きて良弓は蔵われ、狡兎死して走狗は煮らる」
(飛ぶ鳥がいなくなれば、良い弓もしまい込まれる。すばしっこい兎が死ねば、それを追っていた猟犬も煮て食われてしまう)

范蠡は「勾践とは苦難を共にできても、栄華は共にできない人物だ」と見抜き、この言葉を残して越を去り、以後は商人として成功を収めました。
一方、忠告を聞き入れなかった文種は、後に勾践から謀反を疑われ、自害に追い込まれています。

この故事は楚漢戦争の時代にも語り継がれ、国士無双とまで評された名将・韓信が、劉邦によって謀反の疑いをかけられ、処刑される直前に同じ言葉を口にしたことで、より広く知られるようになりました。

使い方・例文

「狡兎死して走狗煮らる」は、功績を上げた人物が用済み扱いされる場面で使われます。

  • 再建に貢献した幹部が急に解任されるとは、まさに狡兎死して走狗煮らるだ。
  • 選挙が終われば掌を返す支持者もいる、狡兎死して走狗煮らるの世界だ。
  • 買収後にリストラされた古参社員は、狡兎死して走狗煮らるを地で行く扱いを受けた。

類義語・関連語

「狡兎死して走狗煮らる」と同様に、必要とされなくなった途端に見捨てられる様子を表す言葉には、以下のようなものがあります。

  • 秋の扇(あきのおうぎ):
    夏には重宝された扇も、涼しくなれば顧みられなくなること。「狡兎死して走狗煮らる」が「組織的な非情さ」を描くのに対し、こちらは主に人間関係、とりわけ愛情が冷めて顧みられなくなる様子に使われます。

英語表現

outlive one’s usefulness

「役に立たなくなる、用済みになる」という意味の表現で、かつては役立っていた人や物が、状況の変化で不要になることを表す表現です。

Once he outlived his usefulness, the company let him go.
(彼が用済みになると、会社は彼を切り捨てた。まさに狡兎死して走狗煮らるだ。)

同じ台詞を残した二人の対照的な末路

この言葉を最初に残した范蠡と、後に同じ言葉を口にした韓信の末路は、対照的です。
范蠡は自ら忠告に従って権力の座から離れ、名を変えて商人となり、「陶朱公(とうしゅこう)」と呼ばれるほどの富を築いて天寿をまっとうしたと伝えられています。

一方の韓信は、この言葉の重みを知りながらも軍を離れる決断ができず、最終的に処刑されました。
同じ警句を語りながら生き延びた者と、それを繰り返しながら命を落とした者。
この対比が、「狡兎死して走狗煮らる」という言葉に、単なる批判以上の重みを与えています。

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