意味
「不条理(ふじょうり)」とは、物事の筋道が通らず、道理に合わないという意味です。
日常では、納得のいかない扱いや理不尽な仕打ちを指して使います。
哲学の分野では、人生に意味を見いだせない人間の状況を指す言葉としても使われ、日常語より重い意味を持ちます。
- 不(ふ):〜ではないと打ち消す語。
- 条理(じょうり):物事の筋道。
語源・由来
「不条理」には、日本語としての歴史と、翻訳語としての歴史の二つがあります。
日常語としての「不条理」は、慶応4年(1868年)の『行在所日誌』に「不条理申掛け候者」とあり、道理に合わないことを言いかける者という文脈で使われています。
意味は今とほとんど変わりません。
もう一つの流れは、フランス語のabsurditéの訳語としての「不条理」です。
作家のアルベール・カミュが『異邦人』と『シーシュポスの神話』(ともに一九四二年)でこの語に独自の意味を持たせ、世界と人間との間に必然的な結びつきがないことを指しました。
この用法が広まり、日本語の「不条理」にも哲学の色合いが加わっています。
使い方・例文
「不条理」は、筋の通らない扱いや、納得のいかない出来事を評する場面で使われます。
- 責任者だけが処分を免れるとは、あまりに不条理な結末だ。
- 努力が報われないという不条理を、彼は黙って受け入れた。
- 真面目な者ほど損をするという不条理な現実がある。
類義語・関連語
「不条理」と同じく、筋道が通っていないことを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 支離滅裂(しりめつれつ):
ばらばらでまとまりがなく、話の筋が通らないさま。 - 本末転倒(ほんまつてんとう):
大事なこととささいなことを取り違えること。 - 矛盾(むじゅん):
二つの物事のつじつまが合わないこと。
「不条理」と「支離滅裂」の違い
どちらも筋が通らないことを表しますが、通らない場所が違います。
「不条理」は出来事や境遇そのものが道理に合わないことを、「支離滅裂」は話や考えの組み立てが崩れていることを指します。
| 語句 | 筋が通らない対象 | 使う相手 |
|---|---|---|
| 不条理 (ふじょうり) | 出来事や境遇 | 世の中や運命 |
| 支離滅裂 (しりめつれつ) | 話や考えの組み立て | 人の発言 |
対義語
「不条理」とは反対に、筋道がきちんと通っていることを表す言葉があります。
- 理路整然(りろせいぜん):
話や考えの筋道がきちんと整っているさま。
英語表現
absurd
道理に合わない、ばかげているという意味で、カミュの用語ともつながる語。
The rule is completely absurd.
(その規則はまったく不条理です。)
unfair
扱いが公平でないと訴えるときに使う、日常的な言い方。
It felt unfair that only she was blamed.
(彼女だけが責められるのは不条理に思えました。)
カミュの不条理、例は通勤と仕事の毎日
カミュは『シーシュポスの神話』で、不条理を感じる瞬間の例として、ありふれた毎日を挙げています。
起きて、路面電車に乗り、会社か工場で4時間働き、食事をして、また電車に乗って4時間働き、食事をして眠る、という毎日です。
月曜から土曜まで同じ調子で続くこの道筋は、たいていは難なくこなせますが、ある日ふと「なぜ」という問いが浮かびます。
そこから不条理の感覚が始まる、とカミュは書きました。
本の題になったシーシュポスは、山頂まで押し上げた岩が転げ落ち、また押し上げることを永遠に繰り返す罰を受けた、ギリシャ神話の男です。
カミュは、毎日同じ仕事を続ける今の労働者の運命も、これに劣らず不条理だと述べています。
カミュの言う「不条理」は、遠い神話の中ではなく、毎日の繰り返しに「なぜ」と問うたときに現れるものでした。










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